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再生資源・リサイクル業界の専門紙

日刊資源新報

WEB資源新報BackNumber 2015年5月

中国向け古紙輸出 自主検査廃止で混乱 コスト高や事務負担増で悲鳴も

中国向けにコンテナ積みされた古紙

中国向け古紙


5月に入り、古紙の中国向け輸出に当たり、大阪のCCIC―JAPANによる自主検査から通常検査への全面移行が実施されたが、輸出企業の現場では大きな混乱も生じているもようだ。
今回の自主検査から通常検査への移行は、これまで東日本等での中国向け再生資源などに関する検査業務を行ってきた東京の日中商品検査の業務が、CCIC―JAPANに移管されることを受けたもので、昨年末より日中商品検査の管轄エリア内で行われてきた繊維くずや金属スクラップなどの対中輸出における検査申請の大阪への移管が段階的に行われてきた。
ただ、そのなかで古紙輸出に関しては、コンテナロットの多さや積地が複数にわたることなどから、検査会社と輸出企業双方にメリットがある自主検査制度を導入することによって貿易の円滑化を図ってきたという経緯がある。こうしたことから、他の品目と比べ移管した場合の検査側の手間やコスト増もかねてから指摘されており、古紙関係者からは自主検査存続を求める声が多かったのが実情である。
5月以降、古紙輸出企業では、これまでの自主検査での検査料金の30%値引きが15%に縮小されただけでなく、検査員の交通費負担もしなければならないため、大きなコストアップにさらされているもようだ。加えて、問題視されるのが積地と日付を確定してから検査申請を行わなければならないという条項で、「特定の工場で製造される製品とは違い、古紙は発生品であり、積地に関してはその時のヤードの状況や天候などに応じたフレキシビリティさが求められる。検査側はこうした実態をまるで分かっていない素人のような対応で、コストだけでなく積地の確定作業に関してもこちらに大きな事務的負担がのしかかっている」(某輸出業者)といった憤りの声も上がる。
一方、検査側にとっても数量の多い古紙は重要な収益源となってきたが、今回の通常検査の移行に関しては運用体制の不備等が指摘されるだけでなく、他機関への業務委託等に伴う利益率悪化も想定される。企業ランクに応じた検査回数調整案も聞かれるが、結局は自主検査と変わらない形になるのであれば、コストだけが増える輸出企業からの理解は得づらく、結果、中国向け古紙の更なる減少で検査側の首をも絞めかねないだろう。

実態に即した方策を 求められる両者協議の下での円滑化
中国の2014年の再生資源輸入量は4000万トン超、そのうち2700万トン以上が古紙であり、依然、古紙が輸入再生資源に占めるウェイトは極めて高い。そしてその輸入古紙の10%以上の供給を担っているのが日本(2014年の中国向け輸出は300万トン)である。一方、製品の輸入増等もあり、中国の古紙輸入の先行きには不透明感も指摘されるものの、東南アジアやインドなどの古紙需要が増大すれば、欧米品に比べ距離的にも近く短納期で入手出来る日本の高品質な古紙は中国にとって引き続き重要な資源の一つに位置付けられよう。
日中間の古紙貿易について、輸出企業は過当競争による薄口銭を数量で補う形となっており、非効率的な作業等に伴うコスト上昇は事業の存続に直結しかねない。それにもかかわらず、業界の声を無視する形で開始された今回の通常検査移行は、短期間での方針転換は期待しづらい。それでも今後、既存の流通形態を踏まえつつ、検査側と輸出側の協議の下、貿易の円滑化に資するとともに双方にとってメリットのある方策を模索していくことが重要ではないか。


全国製紙原料商工組合連合会 国際競争力の向上を 仙台で第38回通常総会

全国製紙原料商工組合連合会・第38回通常総会

全原連・栗原理事長


全国製紙原料商工組合連合会(栗原正雄理事長)ではこのほど、宮城県仙台市青葉区の「ホテルメトロポリタン仙台」において第38回通常総会を開催した。 通常総会では、高橋秀行東北製紙原料直納協同組合理事が司会役を務めた。佐藤清隆東北製紙原料直納協同組合理事長が開会の辞を述べた。次いで栗原正雄理事長が挨拶を述べた。このあと議事では、平成26年度事業報告・同決算報告、平成27年度事業計画・収支予算案などの議案について審議を行い、各案ともに可決承認された。議事終了後には、 来賓を代表して奥山恵美子仙台市長が祝辞を述べた。通常総会は 庄子専一東北製紙原料直納協同組合監事が閉会の辞を述べ終了した。
引き続き行われた懇親会では、高橋文一東北製紙原料直納協同組合理事が司会役を務め、 高崎恒夫東北製紙原料直納協同組合理事が歓迎の挨拶、栗原正雄全原連理事長の挨拶が続いた。これに続いて来賓の川崎雅和経済産業省製造産業局紙議用服飾品課課長補佐 羽山正孝日本製紙連合会理事長が祝辞を述べた。次いで来賓の木村重則公益財団法人古紙再生促進センター専務理事の発声で乾杯し懇談となった。会場が盛り上がりを見せる中、増田喜代治全原連北陸ブロック会長の中締めが行われた。

J-BRAND推進で品質一元化を(栗原理事長挨拶)
「昨年の古紙業界を振り返ると、古紙回収率は 80・8%で過去最高を更新、国内の古紙消費は16万トン増加して1709万トン、回収、消費ともに順調に推移した。また需給調整のための古紙輸出は462万トンに達した。 全原連では、 近代化推進事業を継続、 その中でも最大の関心事であるJ―BRAND(日本古紙品質認定 制度の進展状況については、古紙リサイクルアドバイザー2500名、 古紙商品化適格事業所800ヵ所、古紙品質管理者1500名となっているが、資格を取得した事業所でのJ―BRANDの添付はまだ不十分な状況にあり、制度のさらなる進展にご支援をお願いしたい。J―BRANDを推進していくことにより、古紙の品質基準に見合った品質の一元化が図られることは、 国内製紙メーカーの古紙消費意欲を高めるとともに、国際競争力を向上させる。そして異業種との差別化さらには異業種の古紙部門を取り込むことも可能となり、行政の入札問題の解決にもつながる。また制度の進展は、地域の消費者、行政の協力を獲得することになり、従業員の意識の向上にもなる。新年度もJ―BRANDの進展が古紙業界にとり重要なものであることをアピールしていきたい」。


日本再生資源事業協同組合連合会・通常総会 「個々の声届く組織に」中長期目標作成

日本再生資源事業協同組合連合会・第43回通常総会

日資連・第43回通常総会


日本再生資源事業協同組合連合会(飯田俊夫会長)はこのほど東京資源会館にて第43回通常総会を開催した。全国各地区の代表が参加し行われた議案審議では、同連合会が掲げるスローガン「①市民・行政・日資連でつくる資源循環型社会、②リサイクルシステム議員懇談会との連携強化、③リサイクルでまち・ひと・郷土を再生しよう、④リサイクルで減らそう温室効果ガス、⑤全国へ広げようリサイクル化証明書」をバックボーンに27年度事業計画案などが承認された。
事業報告では、前年度の概況を中国経済の成長鈍化で価格面で陰りを見せつつあると振り返る一方、再生資源の輸出先は、当分の間中国にならざるを得ないとして、今後も中国経済を注視していくとした。また、古紙に関しては回収率を更に高めるため、雑紙の掘り起しに伴う品質向上が不可欠であること、鉄については中国の安値鋼材流入などで韓国電炉の生産が低迷し、日本の鉄スクラップ輸出が減少していることなどから、新たな輸出先エリアの拡大が必要である、などとしている。
また、事業計画では、①中長期目標の作成、②①の実現に向けた具体的対策、③作成した具体策の実務担当部署決定を行う方針。また、これらの実施に当たり多くの組合員、所属員の意見集約が必要であり、声の届く組織改革を最大の課題として取り組む方針が示された。このほか、認定制度とリサイクル化証明書の強化や古紙持ち去り問題についても取り組む姿勢も表明されている。なお、同連合会の全国大会が北海道にて6月29日に予定されるなかで、全国47都道府県加盟達成に向けた情報収集も行っていくとした。


門倉商店 先見性もって事業を進め 創業77周年で感謝の集い

門倉商店創業77周年感謝の集い

門倉商店創業77周年感謝の集い


株式会社門倉商店(佐藤明代表取締役会長、本社・神奈川県横須賀市久里浜1-2000)ではこのほど、横須賀市本町のメルキュールホテル横須賀において創業77周年(会社設立60周年)感謝の集いを盛大に開催した。門倉商店は昭和12年に創業し77年、会社設立より60周年を迎えている。
式典では佐藤昭会長が代表して次の挨拶を述べた。「昭和12年に横須賀という開国の地で創業、造船という基幹産業の関連事業に取り組み、この間、日本の高度経済成長、オイルショック、円高と様々な変動があったが、関係者各位のご指導ご鞭撻のもと乗り切ることが出来た。昭和31年に門倉商店を設立、その後久里浜に新工場を稼働する中で造船、解体工事から一般鉄スクラップ事業にも取り組み、輸出も早期から行うなど、現実と将来を見据えて決断を続けてきた。日本はかつての鉄スクラップの輸入国からアジア唯一の輸出国となったが、中国が鉄鋼製品などの輸出国となり、東南アジアをはじめ我々を取り巻く環境は今後も更に変化していくものと思う。原点・基本を見つめて先見性をもって事業を進めていきたい」。
このあと、来賓を代表して西村眞司住友重機械工業副社長、大角啓丸紅テツゲン常務執行役員、越田進横浜銀行取締役常務執行役員、小泉進次郎衆議院議員、吉田雄人横須賀市長はじめ各氏からの祝辞が続いた。門倉商店の今後80年、100年に向けた更なる躍進が期待される。


非鉄業界 経産省と第一回懇談会 競争力強化前提に交流拡大へ

経済産業省は、国際競争激化や産業分野別に置けるニーズの高度化等、鉄・非鉄金属産業を取り巻く変化を踏まえ、中長期にわたって国際競争力の維持・強化を目的に立ち上げた「金属産業競争力強化プラン(仮称)」を受け、第一回の「非鉄金属団体との懇談会」を本省・別館会議室でこのほど開催した。
懇談会の骨子は、非鉄金属という括りで活動している業界団体の課題や問題点を広く取り上げ、共通の認識の下で解決を目指すもので、第一回目の会合は各団体の概要、動向・取り組みなどを個々に紹介。また、先に立ち上げられている「金属素材競争力強化プラン(仮称)」について、井上幹邦非鉄金属課長から制作などの説明が行われた。
参加した団体は、日本アルミニウム協会、日本アルミニウム合金協会、日本伸銅協会、日本銅センター、日本電線工業会のほか、アルミ缶リサイクル協会、軽金属同友会、非鉄金属リサイクル全国連合会の22団体23名。非鉄金属課を窓口に月例的な開催を予定している。ベースとなる強化プランは、鉄や非鉄金属等の素材ごとに技術力を向上させることを目指し、「技術開発戦略」「国内製造基盤強化戦略」「グローバル戦略」別に検討していくこととなる。


鉄リサイクリング・リサーチ 2000万トンの輸出国化も 2030年の中国鉄源市場展望

国内外の鉄スクラップに関する調査・研究を行っている株式会社鉄リサイクリング・リサーチの林誠一社長はこのほど、「中国2030年・2つの注目点」と題する調査レポートを取りまとめ、公表を行った。中国に関しては景気の低迷等に伴う鉄鋼の過剰生産問題などが指摘されているが、林氏は中国の2030年の鉄源需給を展望するにあたり、世界にインパクトが大きいと思われる、①粗鋼減産と、②鉄スクラップ輸出国への転進、という2点について同レポートのなかで取り上げ、中国に関する2030年までの見通しを示している。
中国の粗鋼生産は2014年8億2270万トン、需要7億1000万トンだが、今年4月に開催された中国鋼鉄工業会の第13回鋼材市場・貿易会議において、冶金工業規格研究院は、2030年には中国の鋼材需要が不動産建築低迷などを主因として5億6700万トンに、粗鋼生産は6億8000万トンに減少するとの見通しを示している。これについて林氏は、中国の状況を長期構造問題に立ち入ったとし、鋼材内需に関してもこれまでの重厚長大型から鉄の消費原単位の低い軽薄短小型に移行しつつあるとの見解を示した。更に、一人当たりの鋼材消費量についても、2001年123・7㎏/人から2013年545㎏/人まで急増、以降2014年には519・7㎏/人、2015年見込みは514・3㎏/人と減少に転じ、2020年に473・2㎏/人、2030年位は390㎏/人になり、鋼材内需は2013年に既にピークを打ったとしている。
一方、中国では国内の鉄鋼蓄積量も急激に増加しており、2014年には67億トンにまで達している。しかしながら、老廃スクラップの回収は2014年4020万トン、回収率0・6%と低位にあり、海外からの輸入256万トンで不足分の需給ギャップを補う格好となっている。
しかしながら、今後の見通しについて林氏は、鉄鋼蓄積量が2020年に81億6000万トン、2030年110億トンに達するものとし、今後の回収率を2020年0・8%、2030年1・1%で想定すると、2020年の老廃スクラップは6720万トン、2030年位は1億2400万トンに達すると予想。更に今後、鉄スクラップの受け皿となる電炉粗鋼のシェアが高まったとしても、老廃スクラップの需給ギャップは2030年に2000万トンの余剰が見込まれ、この分が鉄スクラップの海外輸出に回るとしている。
林氏は今回のレポートは1つのケースを示したものであるが、中国としてはまず老廃スクラップを使いこなすということを国として取り組む必要があること、また、日本にとっては2030年に中国が米国並みのスクラップ輸出国となる可能性を踏まえながら、老廃スクラップ輸出で市場競争するのではなく、シュレッダー化など品位面で国際競争力を高めていくことが重要ではないかとの提言を行っている。


鉄リサイクル業界 流通構造の変化など 山下理事長と木下社長が交流

山下理事長と木下社長

山下理事長(左)と木下社長


長野県下にて金属スクラップや古紙、廃プラスチック及び産業廃棄物などの総合リサイクル事業を手掛ける直富商事株式会社の木下繁夫社長に先ごろ、関東鉄源協同組合の山下雄平理事長が訪問、鉄リサイクル業の将来展望などについて積極的な意見交換などを行った。
両氏は山下理事長が団長を務めた過去2回のインド視察に木下社長も参加したことで親交を深め、今回、木下社長が山下理事長を長野に招く形で交流が行われたもの。
山下理事長は、直富商事の金属や古紙・廃プラスチックのリサイクルを行っている本社工場及び本社第二工場などを見学。その後、木下社長と将来的な鉄スクラップの流通に関し、関東鉄源協同組合の設立経緯や現在の状況等について説明を行うなど、夜遅くまで活発な交流が行われた。
直富商事は長野県を中心として事業を展開しつつ近年は中国での合弁事業等を通じた国際資源循環にも取り組んでいる。一方、関東鉄源協同組合は、組合員81社にて月間2万トン前後を月一回の入札を通じて海外に販売を行っている。鉄スクラップ業界では、国内需要低迷で更なる海外販路開拓が必要視されるなかで、品質や放射能等に関する対応も求められており、地域等を超えたオールジャパンの取り組みの重要性も指摘される。


再生可能エネルギー 費用積み立て義務化も 施設の廃棄ルールづくり検討

再生可能エネルギーは温室効果ガスを排出することなく国内での生産が」可能なことから、我が国のエネルギー自給率向上に寄与する新たなエネルギー源として期待されている。現時点ではイニシャルコストの面で課題はあるものの、バイオマスを除く再生エネについては燃料費を必要としないなど、安価に運転できることも新規導入の大きなインセンティブとなっている。一方で、再生エネ事業への参入を目指す事業者には初期導入コストや、再生エネ事業そのものの将来性などマイナス要因もあり、今後の再生可能エネルギー政策を展開していくうえでの課題も多い。再生エネ事業拡大に取り組む経産省では、今後の再生可能エネ施策の拡大に向け、①長期間、安定的に低コストで運用できる社会システムを支える自立電源としていくための基盤構築、②地域に根ざした再生可能エネルギーの導入実現――等を示す一方、近年顕在化しつある廃棄施設・設備の適正な処理等についても再生可能エネルギー政策の課題として示している。
このほど開いた専門小委員会では、太陽光など再生可能エネルギーの発電事業者に設備廃棄やリサイクルに充てる費用を事前に積み立てるルールを導入するなど、再生可能エネ関連施設の訂正な更新・廃棄にむけたルールつくりを検討していく方針を示した。法律による義務化も視野に、施設更新時や事業撤退時などに設備の不法投棄を招かないよう対策を講じていくことがねらい。 現在、大手電力会社が再生エネ電力発電事業者から買い取るルールが導入されているが、買い取り期間が終了すると安定的な売電収益が見込めなくなるため、その後の事業継続は困難なものとみられている。また、現状でも買い取り価格に設備廃棄費用が含まれるが、事業者が実際の廃棄に充てるという保証はない。
そこで、発電事業者が事業終了後に発電設備を放置したまま事業から撤退することがないよう、買取価格に含まれている廃棄費用を別立てで積み立てることなど、廃棄に至るまでの適切な事業を担保するための環境整備や、確実なリサイクル又は処理を担保する方策について、環境省はじめ関係省庁と連携して実態を踏まえた検討を行う必要があるとしている。
なお、風力については察知等状況により廃棄費用が異なることから、買取価格に含まれている廃棄費用の計画的な積立てなど発電事業者主導の自主的な取り組みが求められるとしている。さらに、これらについて、ガイドラインの制定なども今後の検討課題としている。


環境省 不法投棄除去支援めぐり 抜本的改革へ今夏までに結論

現在、産業廃棄物の不法投棄について、都道府県等が行う生活環境保全上の支障除去等に対し、廃棄物処理法に基づく基金による財政支援が行われている。この支援のあり方を巡り、環境省は4月30日、第一回となる「支障除去等に対する支援に関する検討会」を開催。今年夏ごろまでの報告書取りまとめを目指し、概ね1か月に1回程度開催する予定とした。
現行の基金は建設業界を中心とした産業界からの出捐金と、国の補助金により造成されており、この制度が開始された平成11年度から、平成23年度までの13年間で、延べ80件、総額31億円ほどが都道府県に支援されている。この基金制度の在り方を巡っては、かねてから産業界、自治体、国など各ステークホルダーや学識経験者らが一同に会し議論されており、平成25年には「支障除去などに関する基金の在り方懇談会報告書」が取りまとめられている。その報告書で、平成28年度以降の支援の在り方について、そもそもの基金制度の必要性、妥当性の検討も含めて、今年度末までに見直しを実施することが必要とされており、このほどの検討会の開催となった。
さきの懇談会では、産業界側からは「費用負担について、排出事業者の責任が大きいから負担すべきだという議論がされているが、許可業者による不法投棄等が発生している状況については、行政の管理責任や法制度の問題がある。」(第9回会合)、「目の前の支障に対して緊急に対応する必要があるという理解のもと、社会貢献の観点から費用負担しているが、社会貢献という美名だけでいつまでもだらだらと負担をさせるというのは、いい加減にしてくれと感じる」(第14回会合)など、不満が噴出しており、現行制度をできるだけ維持したい行政側と、どのようなかたちで折り合いをつけるかが注目される。
また、懇談会では「基金制度ができたときは、基金の後ろ盾があることで早期に行政命令を発動し、芽の段階で摘み取ることが期待されていたが、説得性のある実例は報告されていない」など、基金制度の根本的な必要性や妥当性を疑問視する声も上がっており、今回の検討会では、各ステークホルダーの費用負担の割合や、処理業者への負担要請、マニフェストの活用方法、積立金の導入などを争点とし、基金の廃止も含め、支援制度の抜本的な改革に向けて議論が展開されていくと見られている。


海老田金属 境港の新工場が竣工 環境・福祉・リサイクル三位一体の事業展開

海老田金属境港工場

海老田金属 境港工場


鳥取県を中心に事業を展開する(有)海老田金属(海老田英美社長)は、社会貢献活動として社会福祉法人白老会つゆくさを立ち上げ、米子市内に3カ所の保育園を運営するほか、障がい者の自立へ向けた就労支援も積極的に行っている。平成21年には大篠津工場、23年には諏訪工場で就労支援事業を展開し、電話機・パソコン・コピー機等の解体・選別作業を障がい者に任せ、現在、2工場で50名ほどが就労しているという。また、雇用を作るのみならず、相談支援事業所も設け、福祉サービスを利用しようとしている障がい者や家族の相談にも対応してきた。
同社では、かねてから、この事業の3カ所目の拠点となる新工場の建設を進めており、このほど境港市昭和町・照和工業団地内に完成。今月18日に竣工式を開催した。
式には、平井伸治鳥取県知事、中村勝治境港市長、稲田寿久鳥取県議会議員、安田優子鳥取県議会議員、境港商工会議所・足立統一郎名誉会頭ら政財界からの来賓をはじめ、平林金属(株)の平林久一代表取締役会長や(株)田中商会の室山敏彦取締役社長、(一社)日本鉄リサイクル工業会の丸本陽章中国四国支部長ら業界関係者も多数参席。およそ300名が参加する盛大なものとなった。
今回完成した境港工場は、敷地面積は約5000坪となり、定員30名ほどの障がい者を受け入れる予定。さらに敷地内にはヤードも併設されており、その面積はおよそ4000坪にものぼる。このことから、地元政財界などからは、海運の要所である境港に広大なヤードを構えたことで、今や国際商品となった循環資源の物流拠点という役割を担っていくことへの期待が高まっている。
同社会長の海老田耕三氏に、これら一連の福祉事業の意義について尋ねたところ、このような答えが返ってきた。「特別なことをしているとは思っていない。海老田金属がここまで発展できたのは、地域の支えがあったからだ。恩返しのつもりで取り組んでいる」。 地域社会に立脚し、環境・福祉・リサイクルが三位一体となった事業を展開する海老田金属グループ。地元からの社会的信頼も厚く、これからの活躍・発展がますます期待される。


エコマット産業 世界の古紙動向などを予測 RPM関連同行セミナーを開催

(株)エコマット産業では先ごろ、RPM(Recycle Pulp Materials=再生パルプ原料)関連国際動向セミナーを開催した。「RPM国際市場の動向と今後の展望」と題された第一部では、同社社長のオム・ベクヨン氏が、中国における主要古紙輸入国(日本、アメリカ、欧米)の輸入単価や輸入量の推移、各輸出国における輸出先国の構成比、中国国内市場での古紙価格などのデータを示し、分析。今後の展望予測などを語った。オム氏によると、「あくまで個人的な見解」と留意した上だが、日本の古紙輸出に関して「2015年の輸出量は例年に比べ100万トンほど減少し、日本国内における輸出の比重は25%水準から17%水準に急減することを予測している」とした。これは、円の急激な下落で、輸入量が大幅に減少するため、それに伴い、輸入物品の包装材も大幅に減少するためだという。
続く第二部では、同社のハン氏が「韓国の検収基準と中国の検収基準の変更」と題し、日本からの輸入物品に放射性物質が含まれていたとされ、追加された韓国の検収手順や、深刻な環境問題を改善したい中国政府が打ち出した新しい検収基準、それに対応する同社の検収システムなどを紹介した。 第三部では、韓国最大の古紙貿易商社で、エコマット産業の韓国本社であるバランスインダストリーの顧問弁護士・呉奎盛氏(東京神谷町綜合法律事務所)とエコマット産業品質管理課主任のチョウ氏から、海外製紙メーカーの過多クレームに対しての国際訴訟の事例などが紹介された。
その後、オム社長から閉会の挨拶として、日本進出に際して、支援を受けた日本の再生資源業界の面々に日本語で感謝の意を表すとともに、韓国語でこのセミナーの準備に尽力した自社社員にねぎらいの言葉をかけ、閉会となった。


東京二十三区清掃一部事務組合 焼却灰セメント原料へ 最終処分場延命への取り組み

東京二十三区清掃一部事務組合は、ごみ焼却灰の埋立処分量削減に向けて、セメント原料化へと大きく舵を切った。これまで全量処理を目標に、焼却灰の溶融処理が進められてきたが、東日本大震災の影響により、電力需給がひっ迫。さらに、埋立処分場の地盤改良材などに利用されてきたスラグの需要が、今後減少する見込みのため、平成 28 年度を目途に、灰溶融処理施設の稼働を、7施設から2施設に縮小する予定となった。このことから、焼却灰の多くは埋立処分となっていた。
今回の取組では平成32年度に年間3万トンのセメント原料化を目標として、全国各地のセメント工場に輸送する。さらに、平成33年度以降は、民間施設の受入状況を見て、更に2万トン程度のセメント原料化に取り組むとし、主灰中の金属回収などについても今後検討していくとした。同組合によると、これらの取り組みが全て実施された場合、平成27年度33・9万トンと試算されている最終処分量は、平成41年度には14・1万トン減の19・8万トンになるという。なお、飛灰については、放射性物質が濃縮されていることから、当面資源化は困難なため最終処分するとし、放射能濃度や民間の資源化施設の動向の把握に努めるともしている。
現在埋立てを行っている中央防波堤外側及び新海面の埋立処分場が「東京港に作ることができる最後の処分場」と言われており、その残余年数が危機感を持って語られている東京のごみ問題。都の計画では、今後50年間使用できるとしている。しかし、震災などの理由により、同組合の前基本計画の年間最終処分量の目標(予測値)を達成できていない状況が続いていた。今回のセメント原料化への取組は、この局面を打開する大きな一手になるものと期待感が高まっている。