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再生資源・リサイクル業界の専門紙

日刊資源新報

鉄スクラップ

鉄スクラップは日本の保有する貴重な資源

有史以来、人類の歩みは鉄と共にあったと言っても過言ではないほど、我々の生活に「鉄」は密接に関わっている。我々の身近で使われる鉄には、缶、スチール家具、自動車、建物など数えあげれば限りが無い。そして、その鉄製品の原料となるのが、鉱物資源である鉄鉱石などに加え、我々が使用し、不要となった鉄製品である。鉄は使用された後、スクラップとなり、何度も繰り返し新しい鉄製品として甦るリサイクルの優等生である。。我が国に存在するこの鉄スクラップの原資となる鉄を用いた建築構造物・製品などの量、いわゆる鉄鋼蓄積量は13億トンを超え、鉄スクラップとは、まさに天然資源の乏しい我が国の持つ貴重な戦略資源であると言えるだろう。

鉄スクラップの種類と加工処理

鉄スクラップのギロチン加工処理

ギロチン処理

鉄スクラップは大別すると、「市中スクラップ」と「自家発生スクラップ」の2つに分けらる。このうち、「自家発生スクラップ」とは、鉄鋼メーカーで、製鋼や製品加工の過程から発生するスクラップを指し、製鋼メーカーで再利用が図られている。一方、「市中スクラップ」は一般に市中に出回るもので、この「市中スクラップ」についても、機械や車などの製造工場から排出される「工場発生スクラップ(加工スクラップ)」と、廃車、建物、その他使用済み鉄製品といった形で排出される「老廃スクラップ」に分けられる。

鉄スクラップのシュレッダー処理

シュレッダー処理

これら「市中スクラップ」の収集の形態は様々だが、専門の回収業者が回収したり、建築物や自動車の解体業者が鉄以外のものを取り除いた後、スクラップの加工業者に引き渡すというのが一般的だ。鉄スクラップの加工処理業者は、回収された鉄スクラップを、プレス(圧縮)、切断(ガス切断・ギロチン処理)、破砕(シュレッダー処理)などを施して、鉄鋼原料として使いやすい形状に加工した後、電炉メーカーと言った製鋼メーカーへ直接あるいは商社などを通じて納入している。

鉄スクラップには様々なグレードが存在する。日本の鉄スクラップのグレードは、(一社)日本鉄源協会の検収統一規格によって定められております。以下に代表的な品種を紹介する。

日本の鉄スクラップの代表的品種
鉄スクラップ|H2

出荷されるH2

・H2

日本国内における鉄スクラップの中で最も流通量が多い指標品種。建築物の解体工事などから排出された鉄筋、鋼矢板などで構成される。(一社)日本鉄源協会の検収統一規格では、「幅500㎜以下、長さ1,200㎜以下、厚さ3㎜~6㎜、単重1,000kg以下」。

鉄スクラップ|新断

新断

・新断

自動車や機械製品の製造工場などで鋼板を加工した後に残る端材。そのままのものがバラ、圧縮したものがプレス。表面処理していない薄鋼板で酸化していないものがA、多少酸化している薄鋼板又は鋼材材質に悪影響を及ぼさない表面処理鋼板ものがBとされる。

国際商品となった鉄スクラップの今後の課題

鉄スクラップの輸出船積み

鉄スクラップの輸出船積み

鉱物資源の乏しい日本において、鉄スクラップが輸入されていた時代は遠い昔のこととなっている。現在、日本国内の「市中スクラップ」は現在、年間3000万トン以上もの量が回収されている、これが国内で消費しきれずに鉄スクラップの余剰が発生し、その結果、価格の大幅な下落を招いた。こうした国内の鉄スクラップの余剰に対し、鉄スクラップ業界は海外に販路を求めることとなった。こうした海外販路の開拓の結果、日本は現在、世界でトップクラスの鉄スクラップ輸出国に変貌を遂げ、海外からも良質な原料の供給国として、また、日本の鉄スクラップ価格はアジア市場のベンチマークとしても大きな注目を集めている。

その一方で、現在、日本からの鉄スクラップの主な販売先である韓国や中国が今後、経済発展に伴い、自国で鉄スクラップをまかなえる時代が来ることも予想されている。こうしたなかで、日本の鉄スクラップを国際商品として世界の国々に供給するには、国際競争力を確保するための品質確保、そして韓国・中国といった近隣の国々だけでなく、インドなど更なる遠隔地へ販路を拡大するために船舶の大型化とそれに対応するための港湾インフラ整備など、クリアしていかなければならない課題も多く残されている。