日刊資源新報購読お申し込みはこちら

再生資源・リサイクル業界の専門紙

日刊資源新報

故繊維

故繊維の種類と用途

故繊維

故繊維

 再生資源は発生源によって「市中屑」と「産業屑」に大別される。繊維の場合では前者を「ボロ」と呼び、家庭や事業所から排出される衣料品等がこれに当たる。生産工場等から発生する裁落屑や糸屑、綿などの「産業屑」と呼び、それらを総称して「故繊維」と呼ぶ。リサイクル業界が扱う故繊維の多くは家庭から発生するボロ(一部、産業屑や流通業界等から発生する流通不能製品等の扱いも)で、行政の資源回収や集団回収等から故繊専門維業者が直接集荷するものや、市中回収を行う古紙業者等のルートから故繊維市場に投入されるもの、中古衣料品流通ルートから投入されるものなど、市場への入流ルートは多岐にわたる。

 リサイクル用途としては、伝統的にウエス(工業用拭き布)、反毛(繊維を綿状にしたもの、フェルト・紡績の原料)などが存在するが、需要先となる国内産業の海外移転と空洞化、さらには故繊維材以外のウエス製品(紙ウエス・レンタルウエス)との競合などで、国内需要は長期にわたり減少傾向。90年代以降はリユース中古衣料として海外輸出するのが主流となった。しかし、サイズや嗜好の問題から、輸出先はどうしても東南アジア諸国中心となってしまい、冬物衣料の仕向け先の確保が積年の課題となっている。また、輸入国の多くが発展途上国であるため、繊維産業を主要産業と位置付ける国も多く、国内産業保護のために中古衣料の輸入規制を設けている国もある。輸出業者には繊細な需給の押し引きの感覚が求められるのも特徴だ。

 また、故繊維リサイクルの特徴として、鉄スクラップや古紙、ガラスびんなどと違い、製品メーカーがリサイクルにほとんど関与していないことが挙げられる。

故繊維市場の規模と課題

 2000年代に行われた調査では、国内でボロが年間約19万トン、産業系の屑繊維が6万トン弱回収されていると言われている。一般的にボロには市場性がないなどの理由により廃棄物として処理されるものが全体の25%程度あると言われていることから、実質的な再資源化量は年間20万トン程度と推計される。繊維製品の総消費量は年間で200万トン強とされており、その再資源化率はわずか10%程度に過ぎない。

 また、前述のファッション業界による独自回収の拡大や、リユース古着ショップ・ネットオークション・フリマアプリの普及による「良品の先取り」、国内ファッションの細分化(海外で広く流通するメジャーブランドの含有率が減少)などの要因により、市中発生ボロの品質は低下傾向にあると言われ、更なる再資源化率の悪化が危惧されている。

 再生資源全般のリサイクル促進に関しては、各種リサイクル法が大きな役割を果たしてきた。 故繊維についてもかつてリサイクル促進法の整備が議論されたが、リサイクルルートが複雑・多岐にわたることや関係者が広範囲となることから法制化は困難との結論に至った。しかし、業界を取り巻く環境の悪化と緊急性から、動脈側ファッション業界はもちろん、国や行政などの積極的な関与なしには状況の改善は不可能というのが一般的な見方である。