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WEB資源新報BackNumber 2015年12月

びんリユース推進全国協議会 各地域での取組報告 持続性持ったシステム構築へ

パネルディスカッションの様子

パネルディスカッション


びんリユース推進全国協議会は先ごろ、環境省と共催でびんリユース推進地域協議会交流会を開催した。開会にあたり、同協議会の小沢一郎事務局長が「2011年に全国協議会が設立して以来、各地域でびんリユースを進めようという方針で取組を進めてきた。今日はその成果の報告と、これからのびんリユースに期待すること、今後の取組の方向性を探るような会になればと思う」と挨拶。その後、名古屋大学大学院環境学研究科特任講師で東海地域びんリユース推進全国協議会会長の松野正太郎氏が登壇し「びんリユースから考える持続可能な社会―環境+経済+社会=持続性―」という演題で基調講演を行った。
地域協議会からの報告では、京都の吉川商店での太陽光発電の取組、秋田の低コスト自動判別システムの開発を中心とした720ml茶びん回収システムの取組、関東甲信越のワインびんリユースシステムの取組、東海地域の地元酒蔵とタイアップしたリユースびん入り地酒を普及させる取組、奈良県でのリユースびん入り緑茶を地方公共団体の会議などに普及させる取組、大阪でのリユースびん入り緑茶の開発を中心とした普及啓蒙の取組などの成果や、今後の課題が報告されている。
その後行われたパネルディスカッションでは、鈴木弘幸氏(環境省リサイクル推進室室長補佐)、山形信寛氏(山梨県森林環境部森林環境総務課主任)、有田芳子氏(主婦連合会会長兼環境部長)、木内真二氏(日本酒造組合中央会業務第一部部長)、幸智道氏(びんリユース推進全国協議会副代表)、基調講演を行った松野氏が登壇し、リユースびんの今後について議論した。交流会は、びんリユースが将来に向けた社会システムとして持続性を確保できるように取り組んでいくことなどを宣言した「びんリユース取組宣言書」を採択し閉会した。


JESCO ベンゼン超過問題で謝罪 PCB廃棄物早期処理に暗雲

PCB廃棄物適正処理検討委員会

PCB適正処理検討委


環境省は先ごろ、PCB廃棄物適正処理に関する検討委員会を開催した。冒頭、10月30日に明らかとなった、JESCO北九州PCB処理事務所の排ガス中に、同市との協定値(45mg/Nm3)のベンゼン(520mg/Nm3)が検出された問題で、JESCOの谷津龍太郎社長(前環境事務次官)がこれまでの経緯を説明し、謝罪。協定値を超過した原因は、固形排出物重点槽系廃棄対策の不徹底、排気システムの不備という、ソフト・ハード両面での不備に加え、活性炭処理の前段階で、油分を除去するべき深冷クーラー(熱交換器)が頻繁に閉塞しており、熱交換機能を停止させ、活性炭の交換頻度を上げていたことも明らかになっている。本来であればこういった作業手順の変更がある場合は、「PCB廃棄物処理施設の設備改造・運用変更手続き等に関する措置について(通達)」および「北九州事業所環境・安全評価実施要領」に基づき、施設の改造・変更に係る審査を実施しなければならないが、今回、その手続きも踏まれていなかった。これについて、環境省の鎌形廃棄物・リサイクル対策部長は「技術的な問題を越えたコンプライアンス・ガバナンスの問題で極めて遺憾。PCB処理は地元住民との信頼の上で進めていかなければならない。非常に重要な問題と受け止めている。」とJESCOに対して、更なる原因調査と改善を指導した。
また、JESCOでは、この事態を受け「北九州PCB処理事業所での協定値を超えるベンゼンの検出の事案を受けたガバナンス・コンプライアンスに係る有識者委員会」を急きょ設置し、11日夜に第1回会合を行っている。外部の有識者を招聘し、社内の体質改善を図るとしている。
問題発覚後、JESCO北九州事業所は操業停止となっているが、北九州市では検証作業の終了後に市民向け説明会を開催し、開催前の運転再開は認めない方針を明らかにしている。現在、高濃度PCB廃棄物に関しては、平成30年度内(北九州事業)の処理完了を目指し、取組を加速させるための追加的方策の検討を進めているところだが、今回の問題はその流れに大きく水を差す結果となった。処理期限の延長や変更が繰り返されたこれまでの経緯もあり、本当に期限内に処理完了できるのか、疑問符を打たざるを得ない。


スズトクHDと大栄環境HD 「和製静脈メジャー」の推進へMVJ設立

金属スクラップを中心とした総合リサイクル事業を展開するスズトクホールディングス株式会社と廃棄物処理業の大栄環境ホールディングス株式会社では今月10日付けで、今年10月に締結した包括業務提携契約に基づき、共同出資会社「メジャーヴィーナス・ジャパン株式会社(MVJ)」を設立したと発表した。社名に含まれたヴィーナスという表現は英語で「静脈」を意味しており、日本を代表する「和製静脈メジャー」の設立・推進を目指す両社の強い想いが込められたもの。
廃棄物処理やリサイクルは必要不可欠な社会インフラだが、リサイクルビジネスの事業規模は一般的に小さく、これまで投資や営業活動にも制限があった。こうしたなかで、MVJは業界最大手のスズトクHDと大栄環境が持つ資本やノウハウを有効活用し、両社間連携をスムーズに図っていくことを目的に設立された。今後は3社間連携を図りながら、国内事業基盤強化と全国の排出事業者や自治体ニーズに対応、更に国際的にも競争力のある企業グループを形成しながら、「静脈メジャー」として業界全体の再編と振興を図ることで「社会インフラ」としてのリサイクルビジネス全体の活性化を図る方針。
具体的には、廃棄物処理・リサイクルの全国ネットワークを活用したトータルソリューションの提供を進めるほか、「シュレッダダストの減容化」、「ミックスメタルの資源化」、「一般廃棄物処理」を想定した静脈産業もデリ施設の整備、国内外リサイクルビジネスのM&A、次世代技術・設備の商用化に向けた研究開発活動「R&D」を推進し、国が進める静脈産業の海外展開等を実現するためのFS調査事業等に積極的に参画するとしている。新会社MVJは、資本金1億円で出資比率はスズトクHD、大栄環境で50%ずつ。本社を東京都千代田区大手町1―7―2サンケイビル15階に置き、代表取締役会長に鈴木孝雄氏(スズトクHD代表取締役会長グループCEO)、代表取締役社長に金子文雄氏(大栄環境HD代表取締役社長)が就任する。


関東鉄源協同組合・活路開拓事業 2月に成果講習会 山下理事長「今年はインド元年」

インドMTC社を訪問した山下氏と林氏

山下氏、林氏によるインド訪問


関東鉄源協同組合(山下雄平理事長)は、来年2月8日(月)、午前10時30分より、東京の如水会館(東京都千代田区)にて、平成27年度中小企業活路開拓調査・実用化事業の成果普及講習会を開催する。
同協組は、今年9月から全国中小企業団体中央会からの採択事業として「余剰化が懸念される鉄スクラップの新たな循環スキーム構築に向けた調査研究」を開始。東京大学工学系研究科特任准教授の醍醐市朗氏を委員長とした調査・研究委員会と、㈱鉄リサイクリング・リサーチの林誠一氏を委員長とするビジョン作成委員会の2つの委員会を組成し、日本及び東アジアの鉄スクラップ需給見通し等の討議や、販売形態として注目を集めるコンテナによる手掛ける三邦物産㈱の李明鎬社長を招いた講演、更に新たな販売先として期待されるインド市場の調査結果報告等を実施した。
なお、成果普及講習会は、今回、インド現地にも専門家として訪問した林誠一氏が講師を務める。業界が抱える課題の解決に向けた1つ方向性を示すものと位置付けられた今回の事業で業界側委員として両委員会の委員を務め、インド視察にも団長として参加した山下雄平理事長は「コンテナによる販売は今後取りうる選択肢の1つ」と述べると同時に、商社等による輸出も増加傾向を見せるなかで「過去を振り返ったとき、今年はインド元年と言われる年になるだろう」と述べている。


日本郵便 大田区役所で贈呈式 区長と山下雄平氏(㈱ヤマシタ社長)に記念シート

日カレ・金子会長と青年部

大田区役所での贈呈式


日本郵便東京支社では、今月11日からのオリジナルフレーム切手セット「未来へはばたく国際都市おおた」及び株式会社ヤマシタ代表取締役・山下雄平氏が描いた「『多彩なまちなみⅡ』―大田区―」の販売開始に当たり、先ごろ大田区役所にて松原忠義大田区長及び山下雄平氏への記念フレームの贈呈式を行った。
贈呈式に当たり、日本郵便の井上修三東京支社長は「まず、今回の切手の販売に当たり、企画の段階から皆様には大変なご協力を頂き、まことにありがとうございました。山下雄平様の「多彩なまちなみ」も前回すぐ売り切れてしまうほど大変好評をいただき、地域のお客様との連携を深められることで第二回目の快く引き受けてくださいましたことも重ねて御礼申し上げます。弊社はこのほど上場を果たしましたが、皆様に評価を頂き感謝しております。そのなかで、大田区は共通商品券を郵便局で取り扱わせていただくと同時に、郵便局での商品を買ってもらうという全国初の取り組みをさせていただいた自治体様であり、心より御礼申し上げます」と挨拶。 これに対し松原区長は「大田区を題材にこのような形で作っていただき大変ありがたい。区の環境情報センターでも販売させていただく予定だ。マイナンバーも詐欺などの防止に向けても制度の普及、更に大変好評を頂いた共通商品券など、引き続き区民のために郵便局とは地域で連携していきたい」と述べた。
また、山下雄平氏は「大田区はモノづくり、そして我々リサイクル産業へのご理解をいただいていること大変ありがたく心の支えとして日々頑張っております。ただ、誤認識いただきたいのは、日本はスクラップの発生国であり、アメリカに次ぐ輸出国であるということです。私は毎月2万トンほどの鉄スクラップを輸出する関東鉄源協同組合の理事長でもありますが、オリンピックの時に港湾での扱いがどうなるか非常に危惧を抱いており、使用出来ないとなれば我々にとっての死活問題となるだけでなく、オリンピックの際、ゴミが散乱するということにもなりかねません。この点ご留意いただけると幸いです」と述べた。
なお、切手シートは郵便局のネットショップ(http://www.shop.post.japanpost.jp/shop/default.aspx)などから購入できる。





3R推進団体連絡会 容器包装で着実な成果 自主行動計画の2014年度実績公表

3R推進団体連絡会の会見

3R推進団体連絡会の会見


容器包装関連の3R促進8団体で構成する3R推進団体連絡会はこのほど、第2次自主行動計画の2014年度の取組実績を取りまとめ記者会見を行った。 会見に先立ち、連絡会幹事長で紙製容器包装リサイクル推進協議会の川村節也専務理事が、これまでの経緯を振り返り、挨拶を行った。
「当連絡会は2005年、容器包装の素材に関わる8つのリサイクル団体で結成し、経団連の提言『実効ある容器包装リサイクル制度の構築に向けて』を受けて、2006年に自主行動計画を発表。事業者として容器包装3Rの推進だけではなく、主体間連携のための市民・自治体・事業者の意見交換の場の創設や様々な啓発活動などで容リ法の定着に向けて成果を上げてきた。
2011年に第2次自主行動計画を公表し、本日報告する2014年度は、4年目として2015年度の目標達成に向けての成果をまとめたものだ。当連絡会は自主行動計画を通じて容器包装3Rの推進に一定の成果を挙げられたものと考えている」。
リデュースに関して、PETボトル、紙製容器包装、スチール缶、アルミ缶、段ボールの5素材が目標を上方修正するなど、着実な進展を見せた。 リサイクルに関しては、8素材中5素材が当初目標を達成しており、紙製包装容器、スチール缶の2素材が目標を上方修正し、それぞれ22%以上、90%以上としている。
また、連絡会では関係主体間の連携に資するため、「各主体との交流・意見交換」「普及・啓発」「調査・研究」の3本の柱に沿って、継続的な取組を進めている。「交流・意見交換」の分野で、今年は、「容器包装3R交流セミナー」を静岡市、福井市で開催したほか、NPO法人持続可能な社会をつくる元気ネットを事務局に「3R市民リーダー育成プログラム」を実施。さいたま市、越谷市などで3R活動を推進する市民リーダーの育成を支援した。なお、「交流セミナー」は来年1月28日にはさいたま市で開催される予定となっている。


日本びんカレットリサイクル協会 第19回定時総会開催 青年部の組織整え活動再開へ

日カレ・金子会長と青年部

金子会長(手前)と青年部


日本びんカレットリサイクル協会(金子博光会長)は先ごろ、第19回定時総会を横浜市のホテルキャメロットジャパンにて開催し、前年度の事業報告、決算報告と合わせ、新年度の事業計画など6議案が可決承認された。 冒頭、金子会長の挨拶では、新年度から新たに青年部を組織することを明かし、今後の展望などを語った。以下、挨拶から要旨抜粋。
「おかげさまで日カレも今回で19回目の定時総会を迎えることができた。皆様のご協力のおかげで、これまでつつがなく過ごすことができたし、これからも5年、10年、15年とご協力いただければと思う。
ご報告として、本日午前に青年部の会合を設け、これからの方針などを話し合った。これまで、ジュニアコミッティという形で青年部は存在していたが、その活動は限定的なものに留まっていた。これを中身のあるものにしていこうと、今回の会議では、部長をはじめ、人事を決定し組織作りを行っている。今後ますます若い力が重要になってくるなかで、結束を強め、和気藹々とやっていただきたい。日カレというのは他の再生資源業界と比較しても、非常に結束が固く、お互いに協力し利己的な考えを持つ会員はいない。これからますます協力して協会を盛り上げていきたい」。
なお、青年部の初代部長には、中村ガラス株式会社(東京)の中村光輝氏が就任することも併せて発表されている。
前年度の事業報告では、容リ法への適切な対応、白カレットを中心とした需要拡大、輸入びん過剰問題などで、関係業界・ボトラー業界との意見交換を行うと同時に、容リ協、ガラスびん3R推進協議会やリサイクルシステム議員懇談会のもと、効果的且つ適正なガラスびん・リサイクリングを推進してきたことなどが報告されている。新年度はこれまでの事業を継承拡大しながら、青年部の育成と助成や、前年に設立した輸入びん処理対策プロジェクトチームの活動に取り組んでいくとしている。


食品廃棄物を見える化 環境省がツール開発し公表

環境省では、事業者や消費者などの3R行動による環境負荷低減効果を「見える化」し、取組を促進するため、3R行動による環境負荷削減効果を便宜的に計算できる「3R行動見える化ツール」を公表している。このほど、「食品廃棄物編」を作成し、公表した。
このツールは、3Rを推進する行動について、食品トレイなし販売、マイボトルの使用、レジ袋辞退などの3Rを促進する行動の量を入力することで、便宜的に環境負荷の削減効果を数字で表すことができるというもの。3R行動ごとの環境負荷削減効果を、製品の原材料調達から、製造、輸送、処分に至るまでのライフサイクル全体を対象として、定量化し、現在、容器包装廃棄物の3R行動を中心に計35項目が設けられている。
今回の食品廃棄物編では、事業者用には、①仕入調整、②賞味期限が迫った商品の値下げ販売、③賞味期限が迫った商品の加工販売の入力項目を設けている。それぞれの行動量(削減された食品廃棄物の量)を入力し、16品目から食品種別を選択すると、廃棄物発生量の削減量、最終処分量の削減量、CO2の削減量、天然資源(石油、水)投入量の削減量が数値化される。消費者用には、④ばら売り、量り売りで購入した商品を使い切る、⑤賞味期限が迫った商品を購入して使い切る、⑥フードバンクの活用などの入力項目が設けられた。
環境省では、このツールの使用方法として、小売業者が賞味期限の迫った加工商品を、消費者に向けて環境負荷削減効果をPOPなどで提示することにより販促をしたり、自治体や消費者団体が、住民等の食品ロス削減行動を促す際に活用したり、NGO・NPOが、フードバンクへの参加を促す際に活用することなどを想定している。ツールのダウンロードは環境省HPから。





東京都 持ち去り対策支援に言及 廃棄物処理計画でパブコメ

東京都環境局はこのほど、廃棄物審議会でさきごろ中間的にまとめられた廃棄物処理計画の改定について、パブリックコメントの募集を開始した。この「中間まとめ」は、2016年度に改訂される都の廃棄物処理計画について、資源利用や廃棄物処理の現状整理、計画の基本的考え方、目標や指標、主要な施策などをまとめたもの。改訂された処理計画は2020年度までの5年間運用される予定となっている。 主要な施策は、①「資源ロスの削減」、②「エコマテリアルの利用、持続可能な調達の普及促進」、③「廃棄物の循環的利用の更なる促進(高度化・効率化)」、④「廃棄物の適正処理と排出者のマナー向上」、⑤「健全で信頼される静脈ビジネスの発展、⑥災害廃棄物対策」、以上6つが掲示された。
より具体的な施策としては、③「廃棄物の循環的利用の更なる促進」分野では、区市町村と連携した事業系廃棄物のリサイクルルールづくり、焼却灰のリサイクル促進などによる最終処分場の更なる延命化、リサイクル・廃棄物システムの最適化に向けた制度の合理化などが示された。さらに、④「廃棄物の適正処理と排出者のマナー向上」分野では、区市町村への技術的支援の強化、遺品整理、在宅医療廃棄物等、超高齢化・人口減社会に対応したごみ処理システムの検討、家電等の違法処理を防止するため、不用品回収業者等への指導・健全なリサイクル事業者の育成などが示されたほか、持ち去り対策についても「引き続き、区市町村における古紙持ち去り禁止に関する条例の制定や業界団体と連携したGPSによる古紙持ち去りルートの解明、違反者への指導や刑事告発等の実効性の高い取組を支援していくべきである」と言及しており、引き続き市区町村に対し支援していく方針を示した。
また、⑤健全で信頼される静脈ビジネスの発展については、「適正処理の徹底にとどまらず、環境に与える負荷を少なくする取組を行っている処理業者や都民が安心して処理を託すことがで きる資源循環ビジネスが市場で適正な評価を受け、受注機会拡大のインセンティブとなる取組が必要」とし、「産廃エキスパート」「産廃プロフェッショナル」の認定制度を周知していくとともに、国の優良性評価制度の見直しに合わせて、認定制度の整合を図っていくとしている。


関東鉄源協同組合 「H2」売れると確信 活路開拓事業でインド製鋼メーカー等訪問

KAMACHIの原料ヤードで

KAMACHIの原料ヤードで


中国の経済減速に伴う鉄鋼製品の過剰生産問題が世界に大きな影響を及ぼすなか、我が国鉄スクラップ業界においても価格低迷が続くだけでなく、東アジア市場における中国産ビレットが主要輸出先である韓国、台湾、ベトナムなどを席捲、鉄スクラップ需要にとって代わるなど深刻な影響を及ぼしている。こうした危機的状況を踏まえ、関東地区の有力鉄スクラップヤードディーラーで構成される関東鉄源協同組合(山下雄平理事長)は今年、全国中小企業団体中央会の採択事業として新たな販路を切り開くべく活路開拓事業を実施しているが、このほどその一環として、将来中国を超える世界最大の人口保有国となり、大きな粗鋼生産の伸びが期待されるインド市場の調査を行った。インド市場視察はこれまで業界有志により過去2回行われてきたが、今回の視察は日本アジア投資促進協議会(吉居憲司代表理事)コーディネートの下で、同組合が販売を手掛けるH2の販路拡大を目的として行われ、山下雄平理事長を団長に、組合活路開拓事業のビジョン委員会委員長を務める鉄リサイクリング・リサーチの林誠一氏を副団長として、組合メンバー企業他有志によりチェンナイ・ムンバイを訪問。現地企業等と積極的な意見交換を行った。(本紙同行取材・大橋※視察詳細は2016年新年特集号に掲載)
今回の視察では、まず鉄筋(TMT Bar)を製造するチェンナイのKAMACHI GROUP、MTC GROUPを訪問。KAMACHIでは、同社の持つ発電プラントの見学から始まり、製鋼工場、圧延ライン、原料ヤードの見学を行ったほか、夜には購買担当者との会食形式のビジネスミーティングも行った。
KAMACHIはグループ企業のインポート部門において海外の鉄スクラップの輸入経験を豊富に持ち、日本からのスクラップ購入も複数の特定企業から定期的に行っているという。ただ、スクラップの購買については米国ISRIに基づく規格を基準としており、そのなかで日本からの輸については、「Re―Rollable Scrap(リローラブルスクラップ)」などで、製鋼用のH2といったベースグレードの輸入経験は無い。これに対し関東鉄源協同組合では、今回の視察に当たり同組合の加工・出荷から輸出船積みまでの一連の工程をまとめた動画を上映したほか、林誠一氏が日本鉄源協会の日本の規格などに関する説明を行い、日印両国の知見共有を図っている。
次に訪問したMTCも海外からの輸入経験が豊富な企業であり、直近では大手商社を通じ、日本産のシュレッダーやHSなどのスクラップを1万トン以上購入している。MTCはムンバイに拠点を置いているが、今回の視察では同社がチェンナイに保有する2つの製鋼工場の1つを訪問。製鋼・圧延ラインと原料ヤードの視察を行った後、同社事務所にてH2の紹介などを行い、積極的な意見交換を実施した。
ムンバイの船舶解体ヤード

ムンバイの船舶解体ヤード


一方、ムンバイでは近年、地価の上昇で鉄鋼メーカーが土地を売却し、地方に移転をしている実態もあり、ムンバイから140km離れたPUNE(プネ)市で自動車向け部品を製造するSEACO社を訪問。同社は新断などを中心に価格が折り合えば購入したい意向を示した。このほか、インドにおけるスクラップの1つの大きな供給ソースと言われるシップブレーキング(船舶解体)ヤードも訪問。訪問ヤードは都市化が進むムンバイ市内の一角で、1万トンクラスまでの船舶の解体が行われており、その周辺ではここで解体された船舶を製品(中古鋼材)或いは原料スクラップとして加工・出荷されていた。 なお、今回の視察を通じ、山下雄平理事長は「H2はインドで必ず通用するとの確信を得た」とコメントしており、来年2月の販路開拓事業の成果報告会でどのような方向性が導き出されることとなるのか、大いに注目が集まるところと言えよう。


PETボトルリサイクル推進協議会 BtoB一時後退に 目標値届かず82.6%に

PETリサイクル推進協の記者会見

PETリサイクル推進協の記者会見


PETボトルリサイクル推進協議会は11月25日、昨年度の3R推進自主行動計画の進捗状況などをまとめた『PETボトルリサイクル年次報告書2015』を発刊し、記者説明会を開催した。 発表によると、リデュースの分野では、PETボトル全体の出荷量の62%を占める主要17種の軽量化率15%(基準年は2004年)を達成し、着実な進展を見せた。環境負荷という観点から見ても、出荷本数は148億本から203億本と増加しているにも関わらず、2004年から比べ、2万2000トンほどのCO2排出削減が達成されている。 一方、指定PETボトルのリサイクル率を見ると、昨年度は4年ぶりに85%という目標値に届かず、82・6%という結果に終わった。国内資源化量は前年度から1万3000トン増加したが、海外資源化量が4万トン減少し、再資源化量は前年度から1万7000トン減の47万トンとなった。同協議会の算定(販売量÷再資源化量×100)によると、日本のリサイクル率は米国21・6%、欧州40・7%と比較しても圧倒的に高く、「世界最高水準を維持している」とした。 指定法人引き渡し量は、前年度より7000トン減少の28万2000トンとなった。そのうち独自処理量は8万9000トンで、比率にすると32%と前年度から減少せず、未だ高い比率となっている。
ボトルtoボトル(BtoB)リサイクルの利用量は、3万3600トンで前年度から6700トンの減少となった。メカニカルリサイクルでのボトル用途は微増したものの、ケミカルリサイクル製品の一部が他用途に流れていることが、減少の主な原因だ。BtoBリサイクルの後退とも取れる状況にあるが、今年度、新たにメカニカルリサイクル設備が既に稼働しBtoB用途に使用されるなど、協議会では来年度の調査にはより良い数字が出ると見ている。
しかし、一方で原油価格の値下がりによる、バージン材の低価格化など、懸念材料は尽きない。これについて協議会では、「指定法人の入札は現在年2回行われており、多少のタイムラグはあるものの、バージン材の価格と連動して来年以降の落札価格は下がると見込まれるため、長期的に見るとBtoBは成り立っていくと考える。」とコメント。他方、「問題はシートや繊維などの用途に対して、PETボトルがどれだけ優位性を示していけるか、ということ。繊維産業の海外移転が進む中、BtoBでその穴を埋めていければと思う。」と、今後の課題も明らかにした。
なお、協議会では今年5月、着色ボトルや全面糊付け紙ラベルなどの使用を禁止している自主設計ガイドラインを改訂し、新たにBtoB対応の評価基準を追加するなど、今後もBtoBの普及拡大を進めていく。


戸部昇氏(東京包装容器R協組副理事長)に都知事賞 祝賀会に来賓150名超

戸部昇氏の都知事賞祝賀会

戸部昇氏の都知事賞祝賀会


このほど、東京包装容器リサイクル協同組合副理事長の戸部昇氏(東京都リサイクル事業協会副理事長、株式会社トベ商事代表取締役社長)が、東京都知事産業振興功労賞を受賞した。今回の受賞は、びんをはじめとした料飲容器リサイクル業界の発展に長年にわたり貢献した功績が認められたもので、去る11月8日、東京包装容器リサイクル協同組合理事長の笠井仁志氏を発起人に、東京ドームホテルにて祝賀会が盛大に開催された。
会には150人を超す多数の来賓が参席し、代表として、東京都北区長の花川与惣太氏、衆議院議員の大田明宏氏、東京都議会議員の高島直樹氏、東京都リサイクル事業協会理事長の栗原正雄氏、東京壜容器協同組合理事長の田村豊也氏が登壇、それぞれ祝辞を述べた。その後、環境生活文化機構会長の広中和歌子氏の発声で乾杯、懇談となり、祝宴は盛会裏に終了した。
祝賀会の結びには、受賞した戸部氏から謝辞というかたちで、東京包装容器リサイクル協同組合設立時からのリターナブルびんを巡る環境の変化を振り返り、「業界は量のみを扱う時代から品質も問われる時代に入っており、業界基準、規格を各社が実践してレベルアップを図り、今までにない価値を創り出す必要がある」と今後の展望が語られている。