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再生資源・リサイクル業界の専門紙

日刊資源新報

WEB資源新報BackNumber 2011年3月

放射線問題 関東鉄源協組の鉄スクラップ 到着港での検査で問題検出されず

関東地区の鉄スクラップ市場は東日本大震災や福島第一原発の影響で域内メーカーが荷止めなどの対応をとったため混乱を見せたが、輸出船積みについても不安や様々な憶測が飛び交っている。こうしたなかで関東鉄源協同組合が震災後に行った韓国向け鉄スクラップ輸出は到着港において放射能等の異常は検知されず無事に荷揚げとなった。この韓国向けに行われた鉄スクラップ輸出(数量4800トン)は3月15日のもので今週明けに検収となり、同組合では被災後初めての輸出船積みとなった。日本の産品については放射性物質による汚染といった風評被害の拡大が国内外で懸念されるところとなっているが、今回の韓国向け輸出が無事に完了したことは業界にとって朗報と言えるだろう。
同協組の渡辺淳理事長は「原発からの放射線の問題が起きている状況下での船積みだっただけに、組合員の中にも不安に思うところもあった。実際、船積みの際は検知器が反応することもあったが、運送用トラックのラジエーターなどが問題だったのではないかと見られる。今回の韓国向けで異常が検知されなかったことで、現時点ではスクラップは汚染されておらず、大気中の放射線が検知器に反応していると考えられる。また、こうした事実を発表することで、業界関係者がとりあえず安心して事業を継続することができれば良いのではないか」とコメントした。

予想外の放射線反応に注意 トラックのラジエーター原因で検知器反応も
福島第一原発の事故発生後、主に鉄源ヤードで頻発したゲートモニターの放射線反応は、やや小康状態も伝えられるが、ここにきて大気等の放射線反応以外の原因も明らかになってきている。埼玉県北部で金属類の再資源化ヤードを稼働させている某社では、念のため、輸送用のトラックのラジエーターに携帯型検知器を近づけたところ、1・5μシーベルトの反応があった。走行中にラジエーターに蓄積した放射性物質が反応したものと見られているが、同社では「走れば走るほど蓄積される可能性がある」として、随時ラジエーターとエンジンルーム内を洗浄するよう心がけているという。


震災復興 残土除去などで1~2か月 人材確保も多くは手付かず

11日に発生した東日本大震災から2週間が経過したが、現地は電力や物流ルート、或いは港湾整備にガソリン・軽油の供給率上昇等インフラの復興が進む中で、鉄鋼、非鉄金属メーカーに復旧へ向けた動きが胎動し始めているようだ。しかし一方でこれら需要家への物流を担う再資源化業界の実態は、極めて深刻な状況が続いている。
東北地区で鉄鋼、非鉄金属、製紙原料他の物流を担っていた多くの再資源化企業は、場所によっては10数メートルという大津波によってヤード壊滅と物資の流出、設備或いは多大な人的被害という深刻な事態に直面し、事実上の機能停止状態にあるというのが実情だ。連休明けになってようやく感s年道路から枝分かれする太平洋岸ルートが復旧に向かいつつあるものの、今なお被災地区の惨状は目を覆うばかりの状況が伝わっている。
再資源化業界の一部には、復興へ向けたヤード整理等の動きも見られるようになってきているが、現地からの情報によれば津波が残した大量の泥などの残骸の除去といった大きな問題を抱えている。これらを市規定の廃棄場所に運ぶにも、運搬手段の確保から始めなければならず、「人員や機器類の整備、運送手段の確保から政府レベルの金融支援までを含めて、ヤード稼働までには最低1~2か月程度はかかる」と見る向きが大勢を占めている。被災地の1日も早い復興を祈りたい。


東日本大震災 業界に物的支援の輪も 大久保信隆氏が釜石へ物資搬送

災害支援に出発する大久保社長

災害支援に出発する大久保社長


万人単位という未曽有の人的被害と福島第一原発の重大事故を招いた「東日本大震災」に対し、日本鉄リサイクル工業会が総額1800万円もの義捐金を贈るなど、業界内でも復興支援の動きが拡大しているが、現地で早急に必要な物資の搬送など、被災した方々への物的支援の輪も拡がり始めている。
荒川区リサイクル事業協同組合の大久保信隆理事長(株式会社大久保 社長)は今月17日、毛布3000枚を始めとする食糧や日用品などの救援物資を搬送すべく、運転手含む3名で釜石市に向かった。釜石市は荒川区と友好都市として交流を図っており、今回、救援物資を送ることになった。
こうしたなかで、荒川区と荒川区リサイクル事業協同組合は昨年の7月、区内に災害が発生した場合に緊急輸送用の車両類を提供する協定を結んでいる。今回、救援物資が被災地に届かないといった報道を見た大久保理事長から、荒川区に搬送用トラックの提供を申し出、それに対して荒川区が災害対策用の備蓄品の輸送を依頼したもの。大久保理事長は「搬送は雪や交通の状況が大変だが、とにかく困っている人を助けなければ」と語った。


放射性物質 業界超えた問題に 基準値など国は適切な対応を

福島第一原発から漏れ出した放射性物質について、関東地区では人体に影響のない低レベルの放射線反応が見られたが、再資源化業界にとっては、極めて重大な問題になる可能性をはらんでいる。特に風向きによって放射性物質が関東まで運ばれた15日には、あるスクラップディーラーが千葉のメーカーに鉄スクラップを持ちこんだ際、基準値を上回る放射能が検出されたとして荷物の受け入れが断られ、同メーカーでは同日、茨城、栃木、群馬の北関東ナンバーの車両の荷受け不可を発表するという事態となった。メーカーでは、放射能の反応については、大気中のもので、スクラップそのものの汚染ではないと冷静な対応とるところもあるが、16日も一部メーカーでスクラップを積んだトラックから基準値を上回る放射能が検出され、「運転手が頭を下げて3回検査をしてようやく入れてもらった」(某問屋筋)といったことも聞かれた。
更に金属スクラップだけでなく、古紙についても輸出向け古紙で検査を行ったところ基準値オーバーのものが出たため、輸出が出来なくなったという情報も入るなど、金属だけでなく、古紙、廃プラといった再資源化業界では、今後の輸出への影響も懸念する声が出ている。あるスクラップディーラーは「風評被害のようなものではないか。大気中のものが反応しているだけで、スクラップそのものの汚染はしていない。風向きが変われば放射能の数値も変わるし、裏をとればこのことを理由にメーカーが価格を下げたいだけでは」(某スクラップ問屋)との見方もあり、船積みやメーカーなどでも風向きが変わった状況では基準値を上回るようなスクラップは少なくなったという話も聞く。
また、この基準値そのものについての問題も指摘される。業界関係者は「人体への影響が無い水準である低レベルの放射性物質が検出されただけで買わないといったメーカー等の姿勢に問題がある。国はスクラップという貴重な資源をごみにしたいのか。国はメーカー業界に対し、早急かつ適切な対応をとる必要がある」と語る。福島第一原発が今後どうなるかが1つ大きな問題だが、大気中への放射性物質の漏えいが続くようであれば、スクラップ業界だけではなく、日本全体の問題となるだけに、国はこの問題に対し適切な対応が求められるところだ。


東日本大震災 業界あげて東北復興支援を 支援の輪、早くも拡がる

3月11日に発生した東日本大震災は、東北地方の再資源化業界にも甚大な被害をもたらした。特に、福島県、宮城県、岩手県、青森県の太平洋沿岸地区の業界業者ヤードは壊滅的な被害を受けている。小名浜港、相馬港、仙台港、塩釜港、石巻港、気仙沼港、大船渡港、久慈港、八戸港などの諸港近辺のヤードはほぼ全滅。被害総額推定100億円超。JFE条鋼、東北スチール、伊藤製鉄所、東北東京鉄鋼などの電炉メーカー、日本製紙石巻工場、同岩沼工場、丸三製紙、三菱製紙八戸工場などの製紙メーカーも相当な被害を被り、操業停止に追い込まれたもようだ。
東北業界復興への道のりは果てしなく遠い。しかしながら我々はくじける訳にはいかない。まずは業界をあげて地域の復旧に取り組んでほしい。被害にあわれた方々も、そうでない方々も地域の復旧にすべての努力を注力するのだ。発生品を操業の糧とする我々は、地域社会の復興に不可欠だからだ。

鉄リサイクル工業会が義捐金1800万円を拠出
こうしたなかで、(社)日本鉄リサイクル工業会(中辻恒文会長)では、東日本大震災支援策を公表した。内容は①日本赤十字社に義捐金300万円を寄付する②工業会東北支部長に300万円を送金し、支部の現場判断で自由に使用していただく③岩手、宮城、福島、茨城の各部会長にそれぞれ300万円を送金し、部会の現場判断で自由に使用していただく④全会員に義捐金を募集する。専用口座は次の通り。三菱東京UFJ銀行京橋中央支店普通預金:367104 口座名義:社団法人日本鉄リサイクル工業会⑤水、食糧、燃料、日用品などの現物支援やボランティア部隊の編成などは当面受け入れ態勢不明確のため見合わせる。後日、中長期的な支援の観点も含めて検討する。


容器包装リサイクル PETは2万6000円の下落 23年度の品目別落札結果を公表

(財)日本容器包装リサイクル協会はこのほど、平成23年度の落札結果を公表した。品目別の落差状況では、ガラスびんの落札数量は前年度の35万6580トンから35万2384トンと4196トン(1・2%)の減少となった。落札単価は各色とも安定的に推移している。用途別の比率では、びん材向けが継続的に増加しているほか、ガラス短繊維が大幅増となった。
PETボトルは落札数量で前年度20万1330トンから19万7699トンと、3631トン(1・8%)の減少となった。落札単価は有償のトン当たり4万7858円で、前年度比2万5885円の下落となった。このうち有償分落札量は19万4000トンで、全体量の98・1%となり、有償分の総落札価額は96億6600万円で、前年度比49億3900万円増加した。なお、最低価格は有償のトン当たり6万5999円となった。
紙製容器包装は落札数量で前年度の3万2348トンから2万8761トンと、3587トン減少し、落札単価は有償のトン当たり5310円で前年度比4679円下落した。有償分落札量は2万3287トンで、全体量の81・0%となった。有償分総落札価額は1億8100万円で、前年度比8900万円増加している。プラスチック製容器包装は落札数量で前年度67万3149トンから67万8593トンと、5444トンの増加となった。材料リサイクルの優先枠については市町村申込量の50%と設定されたが、実際の落札量は全体の53・6%となり、前年より若干上昇している。
また、ケミカルリサイクルのうち油化手法での落札はなかった。入札の際の上限値も継続され、トン当たり9万8000円とされた。プラ製容器全体の落札単価は前年度比1583円の下げとなり、手法別では材料リサイクル(白色除く)は2979円、合成ガス化は6184円、高炉還元剤化は6672円それぞれ下落している。コークス炉化学原料化は2419円の上昇となった。


ごみ排出量 平成21年度は4625万トン 5期連続で基準年比マイナス

環境省のまとめによると、平成21年度の全国のごみ総排出量は4625万トンで、1人1日当たりでは994グラムとなった。総排出量は12年度以降継続的に減少し、ベースラインとされる平成9年度の5310万トンを5年連続で下まわった。1人1日当たりではピーク値の平成12年度から約16・1%の減少となっている。21年度総排出量のうち、生活系ごみは3018万トン、事業系ごみは1328万トンで、生活系ごみが全体の約65%を占めた。
ごみの総処理量4363万トンのうち焼却、破砕・選別等で中間処理された量(中間処理量)は4068万トン、再生業者等へ直接搬入された量(直接資源化量)は224万トンとなった。中間処理後に再生利用された量(処理後再生利用量)は447万トンで、これに直接資源化量と集団回収量を合計した総資源化量は950万トンとなった。中間処理による減量化量は3185万トン、中間処理されずに直接最終処分された量は72万トンで、直接埋立率は総処理量の1・6%となっている。
なお、容リ法に基づき市町村等が分別収集した276万トンは総資源化量950万トンに含まれる。また、家リ法に基づく再商品化等処理量64万トンのうちの再商品化量54万トンを含めると、ごみの総資源化量は1004万トンとなる。中間処理量のうち直接焼却された量は3452万トンで、直接焼却率は総処理量の79・1%となった。


日本再生資源事業協同組合連合会 正常ルートに回帰へ 持ち去り古紙の流通阻止運動

日資連の記者会見

日資連による記者会見


日本再生資源事業協同組合連合会(上岡克己会長)はこのほど、「持ち去り古紙の流通阻止運動」についてのプレス発表を行った。日資連では持ち去り行為がしにくい状況をつくるとともに、「持ち去り古紙」の流通を阻止し、正常なルートに戻すことを目的として、この運動を展開している。
運動は、持ち去りおよびそれを買い取る業者を指定するのではなく、持ち去らない、買い入れない正常なルートで営む業者数を拡げることで、法的な問題とは区別して行うことを趣旨としている。今後の方針としては、①全国の自治体への賛同の働きかけ、②「古紙持ち去り防止条例」の制定以来、③東京都の古紙持ち去り問題対策協議会などとの連携に積極的に取り組んでいく。
古紙の持ち去り行為が顕著になったのは、行政回収が本格実施されてからであり、最近では、持ち去り行為が組織的かつ広域的で、手口は悪質であり、常習者が多くなってきたという特徴がある。こうした状況に対し、回収業界では自主的なパトロールを実施したり、メーカーや商社、業界内の事業者に対し、持ち去り古紙の流通阻止への賛同を呼び掛けている。なお、この「持ち去り古紙の流通阻止運動」の賛同者は、国内製紙メーカーおよび古紙輸出商社が44社、全原連および日資連会員が1860社で全体で1904社にのぼっている。


環境省 省エネ、太陽光に期待感 環境ビジネスへの志向高まり

環境省では昨年12月、環境ビジネスに焦点を当てた経済動向調査として「環境経済観測調査」を実施、このほど調査結果をとりまとめた。この調査は公務を除く国内すべての産業で資本金2000万円以上の企業のうち資本金、業種別に無作為に抽出された約1万1000社を対象に実施されたもので、環境ビジネス全体の業況についての現況と半年先、10年先予測のほか、国内で発展している環境ビジネス分野についての現況と半年先、10年先予測、現在実施中の環境ビジネスと今後実施したい環境ビジネス──等について聞いている。
環境ビジネス全体の業況では現在、半年先、10年先について「良い」、「さほど良くない」、「悪い」から回答を求めたところ企業規模、業種に関わらず「良い」が「悪い」を上回った。企業規模が大きいほどその傾向が強く、また将来に行くほど「良い」と考える企業の割合は高い。国内で発展していると考える環境ビジネスでは現在、半年先、10年先ともに「環境配慮型自動車」を挙げる割合が最も高く、現在で2位の「省エネルギー型家電製品(エコポイント対象)」は半年先、10年先では上位に入らず、制度終了の影響を反映していると見られている。半年先、10年先では「省エネルギー及びエネルギー管理」、「太陽光発電システム」、「再生可能エネルギー施設」などエネルギー関連産業が上位に挙がっている。
環境ビジネスの実施状況では35・9%の企業が実施していると答え、 企業規模が大きいほど実施している割合が高い。製造業、非製造業では環境ビジネスを実施している割合に大きな差はない。実施している環境ビジネスでは「省エネルギー及びエネルギー管理」や「廃棄物・リサイクル(サービス提供)」を挙げる企業が多い。業種別では製造業で化学、石油等の環境対応製品、エコマーク製品等を含む「環境負荷低減及び省資源型製品」を挙げる割合が高く、非製造業では「省エネルギー及びエネルギー管理」とともに「廃棄物処理・リサイクル(サービス提供)」が2割を超え、次いで設置工事等が中心とみられる「高効率給湯器」が挙げられた。
今後の環境ビジネス実施の意向では、回答企業の30・0%が今後新たに実施したいと回答しており、現在実施していない企業では実施意向の割合は15・3%にとどまったものの、既に実施している企業では過半数が新たな分野への参入を志向していると回答した。今後、実施したいと考える環境ビジネスとしては「省エネルギー及びエネルギー管理」、「太陽光発電システム」を挙げる企業が多かった。なお、環境ビジネスの「海外需給」については、将来的には改善が期待されてはいるものの、足下では全産業を下回っており、「海外進出意向」についても先行きは高まる傾向にあるが、全産業と比べると進出意向が高いとはいえない。


優良認定制度 排出業者、処理業者双方にメリット 新制度で電子化加速に弾み

今回の廃棄物処理法の改正で、優良な産業廃棄物処理業者を認定し、許可期限の延長などの特例措置を講じる新制度が創設された。今年4月1日より各自治体で申請の受付が始まる。この制度で優良処理業者として認定されるには、処理業者としての実績や情報公開など業の透明性、各種認証取得など環境配慮の取組み、財務体質の健全性、電子マニフェストシステムの導入──等の要件が設けられている。許可更新時か、4月1日時点で5年以上継続して許可を受けている場合には有効期間内に随時申請することができる。
優良認定業者には許可期限の延長(通常5年の許可期間を7年に)や、許可申請時の添付書類の一部省略など特例措置が設けられている。また、認定優良事業者として排出事業者に自社の優位性をアピールできるなど、営業・販促ツールとしても有効なものとなる。一方、排出事業者にとっても、処理業者を選定する際に処理委託の状況を明確に把握でき、産廃処理に関するコンプライアンスが確保できるほか、事業者が公表した処理状況や施設処理能力等情報を比較、検討して業者選定に活用できるなど、優良認定事業者を選択することのメリットは大きい。
また、今回の改正では、多量排出事業者が産業廃棄物処理計画を作成し、実施状況を報告、公表することとなっているが、その際に優良認定業者への処理委託量を記載するため、優良認定業者への委託を積極的に行うことで環境に配慮した事業活動を行っていることを広くアピールできる。 なお、優良認定には業の内容をインターネットで公表することが条件となることから、電子マニフェストの利用拡大や、情報公開支援・事業者検索システムの「産廃情報ネット」の参加拡大が進むことが期待されている。


田口金属 独自技術でネオジム回収 経産省レアアース案件で採択決定

供給量の90%を中国に依存するレアアース供給体制の改善を目的に経済産業省が先頃行ったレアアース対策補助金の第1次公募で、申請175件中160件(うち中小企業50件)、交付総額で331億円の採択を決定した。昨年7月の中国によるレアアースの大幅な輸出枠削減という事態の下で、2010年度の補正予算として計上された「レアアース総合対策費」1000億円を基に「レアアース等の使用低減・代替案件」65件、「リサイクル案件」62件、「供給源の多様化(米国、豪州等)案件」7件、「需要業界によるレアアース等に関する試験・評価設備等の導入案件」26件を採択したものだ。
同省では緊急性の高いレアアースの諸案件について、より広くレアメタルを含めたわが国製造産業の隘路を解決すべく、第2次の事業公募も行っている。第1次公募で採択されたリサイクル案件では、国内再資源化業界から田口金属㈱他数社が採択されている。このうち田口金属㈱(本社・東京新宿区、総和工場)が取り組むのは、「使用済み家電製品等のモーターからのレアアース抽出ライン設備導入事業」で、主にエアコン室外機用コンプレッサーからのネオジム磁石の抽出、脱磁を目的としたライン装置一式を開発するもの。
システムは一体型加熱冷却装置をメインに、ローター抜きプレス機、磁石抜き取り作業設備、脱磁前処理設備の他、排水処理設備等で構成され、ネオジム磁石等の分離、回収とその効率化を進める。順調に事業が進捗すれば平成23年5月下旬にも完工、試運転調整後に試験稼働を開始する予定となっている。
特筆すべきは、この事業が同社の「家電リサイクル室」と「技術開発室」(小林旬室長)が協力して取り組み、システム設計に係る全てを自社で完結したことだ。今後は家電リサイクルプラント各社にこの成果を持ってアプローチし、全国のリサイクル拠点からの作業委託にも結び付ける考え。「大企業が手掛けにくい細かな再資源化事業に対する我社の取り組みが国に認められたことを誇りに思っている」と語っている。


エバタ 廃タイルカーペット・リサイクルに参入 初年度で4000トンを再資源化

「エバタ㈱」(本社・東京葛飾区、斉藤章代表取締役社長)は、これまで再資源化が難しいとされてきた使用済みタイルカーペットの再資源化事業に参入する。廃タイルカーペットを同社独自の方法で処理・加工し、再生原料化したもので、「エバペレット」の商品名で販売する考えだ。「エバペレット」はタイルカーペット廃材を、塩ビを基材としたパッキング層とナイロン等の繊維層を分離せず一括粉砕して造粒化したもので、繊維も含め製品化していることで、2次廃棄物も殆んど発生しない。
用途先はタイルカーペットの基層、ホモジニアスタイルの中間層、遮音シート、塩ビ床材、靴底、仮設シート用原料等様々な分野、用途で活用できる素材となっている。リサイクル工場は11年から本格稼働しており、初年度は4000トン、3年以内に1万トンの規模まで拡大する考えだ。
日本国内で年間2500万㎡生産され、その60%以上が敷き換え後に使用済み製品として発生するタイルカーペットは、複合素材を使用した製品特性から分別処理が難しく、従来までは年間推定で1万5000㎡(約7万トン)が廃棄物として処理されていた。最大の理由はタイルカーカーペットの構造によるもので、塩ビを基材としたパッキングに、ガラス繊維、ポリエステル基布、ナイロン繊維、炭酸カルシウムなどが組み合わさった構造で、これら複数の原料を効率的に分離することが難しかったことによる。