WEB資源新報 リサイクルコラム
ペットボトルR 希望入札制度を検討 需給マッチングで容R回帰を(2017年5月)
容器包装リサイクル法に基づく我が国のペットボトルリサイクルの今後の方向性について、指定法人への円滑な引き渡しと資源効率性・環境負荷削減効果の高い国内循環を推進に向け、希望入札制度を導入する案が先の第2回目となる「ペットボトルのリサイクルの在り方検討会」で示された。
この希望入札制度は、有償入札となる範囲で、市町村がその引き渡しを行う分別基準適合物の関わる再商品化の内容を希望出来る制度。市町村は指定法人への申し込みに際し、再商品化製品利用製品(優先順位)や近郊でのリサイクルの希望を新たに受付けつつ、その一方で再商品化事業者等を通じて再商品化製品の利用見通しを把握し、各製品の利用見通しの範囲内で市町村の希望に沿った入札選定を行うもの。
同検討会の議論のなかで、市町村や再商品化・利用事業者へのヒアリングを踏まえ明らかとなった我が国のペットボトルリサイクルの課題として、使用済みペットボトルの量の不足や入札・再商品化製品販売価格の不安定さ、逆有償を前提とする指定法人ルートの魅力不足、独自処理ルートと指定法人ルートの不公平性などと指摘。これを踏まえた今後の方向性に関する基本的考え方として、高品質な原料となる使用済みペットボトルには限りがあるため、水平リサイクルとカスケードリサイクルを組み合わせた最適化を進めることと、市町村の独自処理量が分別収集量の3割を占める状況を踏まえた指定法人ルートの魅力向上が重要であると結論付けている。
その方向性の一つとして導入が検討されている今回の希望入札制度は、自治体側の希望(需要)とボトルやシート、繊維、成形品といった再商品化製品の利用見通し(供給)の需給マッチングを行うことで、独自処理から指定法人ルートへの移行が図られ、量や価格の安定性やトレーサビリティの確保やリサイクル製品間の質的競争、消費者の分別協力、分別の質的向上といった効果が期待されるとしている。 ただ、希望入札制度に関しては、国内で発生する約60万トンの使用済みペットボトルに対して再生品の国内需要が低いため、例えば自治体側の希望が必ずしもマッチングされるわけではなく、マーケットが分断される恐れや再商品化製品によって相当の価格差が生じ、マーケットが混乱する点、更にはマーケットが無くなり単なるマッチングになる可能性も指摘されている。
ペットボトル再商品化に関しては、近年、ボトルtoボトルなどの水平リサイクルやシート需要は堅調に推移する一方、繊維に関しては中国の台頭などに伴い、需要構造の変化も指摘される。こうしたなかで、今回の希望入札制度が導入されれば、消費者にも分かり易いボトル向けなどには追い風となるだろうが、それだけで国内循環を進めることは難しい。いずれにせよ、制度が導入されれば、我が国廃ペットボトルの流通に大きな変化が起きることも予想されることから、今後の議論の行方が注視されるところだ。
※ペットボトルリサイクルの現状
ペットボトルは年間約60万トンが利用され、そのうち使用済みペットボトルとして市町村が分別収集する量が約30万トンとなるが、うち容器包装リサイクル法に基づく指定法人への引渡量は20万トンに止まり、約3割の10万トンが独自に処理されている。国内リサイクルについては、市町村及び事業系問わず、年間約26万トンの再生PET樹脂がシート、繊維、ボトルなどの用途に利用されているが約31万トンが輸出されているとされる。他方、国内には年間約50万トンのペットボトルの処理能力があるとされ、再商品化事業者でのボトル海外流出による処理設備の稼働率低下や再生PET樹脂そのものの国内需要低迷などが問題視されてきた。ただ、近年では、ボトルtoボトル向け等の高度Rも進展、今後の制度のあり方が問われていた。