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WEB資源新報 リサイクルコラム

廃掃法改正 「専ら物」存亡の危機か 将来の廃棄物定義見直しで(2017年3月)

日本鉄リサイクル工業会の環境委員会が先に開催した定例講演会で、環境省の廃棄物リサイクル対策部・企画課の萱嶋富彦氏は、雑品スクラップの規制強化に踏み込んだ今回の廃棄物処理法とバーゼル法の見直しに関連した将来に向けたリサイクル制度について、「国際的な定義ではリサイクルの用に供される物は幅広く『廃棄物』とされている」ことを取り上げ、参加した金属リサイクル事業者に対し「雑品スクラップだけに止まらず、次の展開が間違いなく起きる」と述べた。


バーゼル条約第2条1によれば、「『廃棄物』とは処分がされ、処分が意図され又は国内の規定により処分が組づけられている物質又は物体をいう」とされており、「金属リサイクルの未来を考える上では、国内制度をめぐる動向のみならず、国際的な動向にも目を向けていく必要がある」とまとめられている。 このことは、これまで廃棄物処理法上の許認可が不要とされた「専ら物」として業界が扱ってきた鉄・非鉄などの金属スクラップが今後「廃棄物」と定義されるおそれがあるだけでなく、他の古紙やびん、故繊維も「廃棄物」になる可能性が示唆されたものと言え、これまで許認可を持たず「専ら物」としてこれら資源物の再資源化を行ってきた業界にとって、極めて重要な問題になりそうだ。


ただこの「専ら物」の「廃棄物」化の動きについては、かねてから業界内の一部で指摘されており、業界のある識者は「3Rの進展で廃棄物の減量化が進んだため、廃棄物処理業者の仕事が減っており、廃棄物業界から働きかけも行われていた。環境省側も廃棄物行政での省益拡大を図ることも出来るため、互いに利益に繋がることになる」と語る。その流れの一環か、萱嶋氏は講演において現行の環境省廃棄物・リサイクル対策部が「環境保全・資源循環局(仮称)」に格上げされる予定であることを昂然と語った。


いずれにせよ、これまで我が国のきめ細かな資源循環を担ってきた、多くが中小零細で成り立つ再資源化業界にとって、「専ら物」の「廃棄物」化は死活問題に直結しかねない。鉄リサイクル業界では産廃中間処理業の許認可を持つ業者も多く存在するため、自社の利益のために更なる規制強化を望む声も聞かれるが、古紙業界などからは反発の声も挙がる。廃棄物の定義などが議題になると言われる次回の廃棄物処理法の見直しは5年後だが、再資源化業界が現行の「専ら物」を死守すべきと考えるのであれば、今すぐにでも対策に乗り出すべきと言えよう。