WEB資源新報 リサイクルコラム
インド向け鉄スクラップ輸出 加工くず中心に急増 更なる現地調査を(2015年8月)
我が国からのインド向け鉄スクラップ輸出量が今年に入りじわりと増加を示している。背景には、国内における需要低迷に加え、これまで主力の輸出先であった韓国、中国、台湾等のマーケット環境の悪化、自給化の進展などがある。新たな販売先として拡大を見せる東南アジアも、中国で過剰に生産されたビレットなど半製品が流入などの影響が懸念されるなかで、中国に次ぐ世界第二位の人口を持ち、今後大規模なインフラ開発に伴う鉄鋼需要の大幅な増大インド市場の本格的な開拓が始まっていると言えよう。ただ、一方で日本からのインドへの輸出に関しては運賃などのコスト面のほか、品質面など対応しなければならない課題は多い。日本及びインドの通関統計の中身などを踏まえ、インド向け輸出の現状と課題を認識する必要がありそうだ。
日本側の通関統計によれば、今年1―6月におけるインド向け鉄スクラップ輸出量は昨年1年間の累計6085トンを倍以上上回る累計1万3459トンに達した。その中身についても大きな変化が見られ、昨年6085トン中5794トン(95・2%)が「鉄鋼のヘビーくず」となったのに対し、今年は1万3459トン中の8894トン(66・1%)を「切削・加工くず」が占める格好だ。また、既に「ヘビーくず」の輸出量に関しても4191トンに達し、昨年を上回る勢いで輸出が行われている。
なお、日本側の輸出地についてみてみると、「切削・加工くず」8894トンのうち、8484トン(95・3%)が中部エリアから出荷されているのが特徴で、中部エリアにおける加工くず需給の緩和がインドへの輸出を促す格好となっている状況が伺える。
一方、インド側の輸入統計を見てみると、今年1月からデータの取れる直近8月までの日本からの鉄スクラップ輸入量は、1万8501トンにも達しており、こちらも昨年1年間の輸入量から倍以上の増加を示した。その中身を見てみると、2014年の輸入では「REROLLABLE SCRAP」がそのほとんどを占めていたが、今年に入ってからは「MELTING SCRAP」が多くなってきていることが伺えるほか、1ロット当たり数十トンから200―500トンまでのものが中心となっており、コンテナでの輸入形態が想像される。更に日本側の通関統計との整合性をとると、今年、日本からインドに入ってきているものの多くは溶解用の「コンテナ積み加工スクラップ(プレス及びシュレッダー等)」ということが推察されよう。
インド誘導炉原料ヤードの新断
これまでのインド現地企業の訪問を踏まえれば、スクラップの需要先メーカーは大手、中堅、そして1000社以上存在するという小規模な誘導炉メーカーとなるが、大手は自社で高炉や還元鉄プラントなど上行程を持っていることや、中堅は特殊鋼などに付加価値の高い品種にシフトする企業が多いことが分かってきており、輸出対象が小規模な誘導炉となれば、企業規模や炉のサイズなどから見て、小ロットなコンテナによる輸入というのは筋の通る内容だ。また、誘導炉メーカーでは鋳物製造を行うところも多く、現地視察先でも輸入新断などの在庫を見ることが出来たことから、日本からのインド輸出は加工スクラップが主体となっていることも想像に難くないだろう。
ただ、現状では日本からの輸出はバラ積み船による韓国などを主体としたH2等を中心とするヘビーくずであり、これらのインドへの販売を今後どう拡大していくかが大きな課題と言える。いずれにせよインド側の需要サイドの受け入れ体制をはじめ、異なるスクラップの規格、運び方など更なる調査・研究が引き続き必要と言えそうだ。