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鉄スクラップ 海外で規制強化の動き相次ぐ 冷静な情報収集求められ(2015年4月)

需要業界である電炉の再編で今後更なる国内需要の縮小が見込まれる鉄スクラップ。業界では、こうした将来像を見据え、海外への販路拡大を視野に入れた取り組みも散見されるが、その一方で海外では輸入国側における規制強化の動きも指摘される。とりわけ業界の注目を集めているのは、これまで我が国の鉄スクラップの最大の需要国であった韓国では、日本産鉄スクラップの放射能規制強化策導入だが、当初4月の施行が遅れ、日韓双方で運用面などについて協議が続けられている格好だ。更に海外では、今後最大の人口保有国となり、大幅な鋼材需要の増加が見込まれるインドにおいても、新たな規制策導入が指摘される。過剰生産問題を抱える中国の安値鋼材の東アジア市場席捲も懸念されるなかで、新たな日本産鉄スクラップの販売先として期待されるインド市場は今後どうなるのか、冷静に情報収集を行う必要がありそうだ。


インド向け金属スクラップは積み込み中などの動画提出義務付けも?

インド現地情報によれば、先ごろインド政府は、インドへの金属スクラップ輸出に当たり、従来から義務付けてきた政府の指定する検査機関による積地検査に加え、今後、積み込み中の貨物や検査設備のほか検査員、輸出者の顔をビデオ撮影し、提出を義務付けるという発表を行ったもようだ。これに伴い、インドへの金属スクラップの輸出既契約のキャンセルが相次いでいるようだ。仮に厳格運用を求められれば、「コンテナの場合は、港とは別のところでスクラップ積み込みが出来るため、まだマシだが、バルクの場合、国や地域によっては港湾地域での写真やビデオ撮影が禁止されているため、相当無理が出て来る」(現地商社筋)との見方も伝えられるところとなっている。


インドの鉄スクラップ輸入は、2014年で570万トンほどとなっており、多くはU.A.E、南アフリカ、英国、米国などからとなっているが、新たなレギュレーションが導入されれば、「月間40万トン前後の輸入スクラップのデリバリーが滞ることとなり、インド国内の市況にもインパクトが出る可能性」(同筋)も指摘されている。


一方で、他の関係者はこうしたインドの動きについて「対応出る輸出企業は少数であり、結果として輸入鉄スクラップ価格は高騰、インド国内の鉄スクラップ供給業者の保護につなげる狙いもあるのかもしれないが、国内スクラップは自給化出来るほど多くなく、輸入スクラップ高価格化へのユーザーからの抗議で制度自体の維持は難しいだろう」との認識を示している。また、インドの鉄鋼産業の構造から見ても、大手は高炉が主体で、電炉は銑鉄と還元鉄を主体としているため、今回の輸入スクラップに対しる規制がどの程度の影響が出て来るのか不透明だという冷静な意見もある。


日本からの鉄スクラップに関しては、インドへの輸出実績が乏しいため、現状で大きな影響はないと見られる。ただ、水面下で進むインドへの鉄スクラップ輸出拡大に向けた日本側の動きに今回のインド側規制強化は冷や水を浴びせる格好になるだけでなく、一部ステンレススクラップ輸出等についても影響が示唆され、引き続きインド側のアナウンスが待たれるところだ。