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WEB資源新報BackNumber 2019年8月

関東紙研修会8月度定例会 問屋在庫は高水準 中国以外の仕向け先開拓が急務に

 関東紙研修会では8月22日、埼玉県設営により、8月度定例研修会を開催した。
 古紙市場の動向については、以下のような内容で報告が行われた。
 6~7月は天候不順で飲料関係の梱包材の出荷が落ちたことから、段ボール古紙の回収も減少した。段ボール古紙は年間140万トン程度の輸出により需給バランスが保たれると見られている。段ボール古紙の輸出価格は、問屋店頭ベースでキロ5円くらいまで値下がりしていたが、9~10円まで価格は回復した。今月中旬には1~2円程度値下がりしてきている。
 国内製紙メーカーの古紙の在庫能力は5万トン減少して85万トンとされている。盆休み前後でのマシン修理などから、製紙メーカーの古紙の需要も減少しており、8月末には在庫は82万トンまで増加する見込みとなっている。
 9月については、消費増税前の仮需から製紙メーカーもフル生産となり、9月末在庫は10万トン程度の減少が見込まれている。10~11月は、その反動で段ボール原紙は減産となる。段ボール原紙の価格は値上げされており、製品市況のためにも、製紙メーカーの段ボール古紙の購入価格は維持する必要があると思われる。
 米国では、 段ボール古紙の回収が減少してきており、東南アジアに対する投げ売りのような安値輸出は控えられてきている。米国の段ボール古紙のヤード仕入価格は25ドル程度まで値下がりしている。このようにキロ3円以下の価格では段ボールは回収されず、ゴミ化が増えてきている。
 中国では、2019年の製紙メーカーの古紙輸入ライセンスは1000万トンくらいに減少しており、メーカーでは輸入枠を温存している。中国国内の段ボール古紙の価格は、キロ50円まで上昇していたものが28~30円まで下がり、回収率も低下しているもよう。
 2020年の中国の古紙輸入ライセンスは前年比40%減少が見込まれてきており、その場合は、パルプが70%含まれる米国の段ボール古紙を中心に輸入することが想定されており、日本からの中国向けの輸出は大幅に減少するおそれがある。日本からの輸出では、中国以外の仕向け先を開拓していく必要がある。中国の製紙メーカーは、国内で高い古紙を購入して、製品価格も高くなっており、国際競争力がない。アジア市場では、経済成長のもとで梱包材の需要は拡大していくことになり、インド、マレーシア等で段ボール原紙の生産工場が稼働していくことになる。2年くらいで古紙のマーケットも正常に戻ることになると思われる。
 各地区の状況報告によると、問屋ヤードの入荷は全体としては減少傾向にあるが、段ボール古紙の在庫は高水準となっている。ヤードの仕入相場は、値下がり傾向が見られる。中心価格についてみると、 キロ当たり段ボールは6~8円、新聞8~10円、雑誌3~5円どころとなっている。


アルミ缶実需サイドにC缶忌避の動き 低品位還流でコスト増 歩留まり向上の対策急務に

 中国による第7類非鉄金属スクラップの輸入禁止以降、我が国に還流した低品位非鉄スクラップの国内処理が急増しているが、一方でシュレッダー等での処理による鉄、銅その他の異種金属や異物が混入したアルミ缶と称する「B」「C」クラスの使用済みアルミ缶の物流量も右肩上がりに増加、異物混入を嫌う需要業界の荷受け制限等の動きのなかで飲料用アルミ缶リサイクルマーケットのリサイクルループの構築に陰りが生じ始めている。
 異物の混入が少ない「A」缶に対するニーズの高まりの一方で、最終需要家の中には異物の混入比率が少なく歩留まりの高い「タイ」ルート等からUBCに触手を伸ばす動きも表面化、我が国からのアルミ缶の輸出向けマーケットでも買い手から価格面での差別化が突きつけられる等の動きも強まっている。
 足元では使用済み飲料用アルミ缶プレス(UBC)を巡る夏場の需要動向が緩和に転じ、グローバルマーケットでの品質問題がクローズアップされるなか、先行きにかけた弱気ムードが徐々に拡大し始めている。
 8月6日、当面の指標となる横浜4区の自治体入札が明らかとなったが、8月入札は120円台を大きく割り込む117円台〜120円台と右肩下がりの成約に終わっている。
 市場関係筋によると、7月以降のアルミ缶発生は梅雨明け直後からの猛暑の影響もあって全国的に発生量が増加。ここにきて問題化している不純物の多い「B」「C」クラスのアルミ缶発生増も加わって、アルミ缶の選別処理システム等に対する問題提起が需要家側から突き付けられそうだ。


前田金属工業 メディカル・フォレストたちかわを開設 一人ひとりを元気にする地域の森に

 前田金属工業株式会社(前田聡一郎社長)では本年4月より同社敷地内に複合医療施設「メディカル・フォレストたちかわ」をオープンさせたが8月2日、同施設のオープニングセレモニーが開催された。
 前田金属工業は約60年前から立川市柴崎町において、金属スクラップ業を営んできたが、その中で同社は常に、単に地域の一員としてのみではなく、「この地域を自ら積極的により良く育てていく」ことを目指してきた。
 そこで、隣接地を取得したのを機に、地域に愛される場づくりを通して、地域に愛される企業を目指すべく、メディカルモールの開設に踏み切った。
 JR中央線・立川駅、多摩都市モノレール・柴崎体育館駅からほど近い敷地に、脳神経外科、糖尿病内科、薬局、保育園を誘致。敷地内には駐車スペース39台分を完備した他、「すべての関係者にとって使いやすく心地よい場」を提供すべく植栽ゾーンも設けた。また、一人ひとりを元気にする「地域の森」をスローガンとしている。
 オープニングセレモニーには、80名を超す同社関係者が出席した。
 開会に当たり前田聡一郎社長が全ての関係者に対する謝辞とともに次のような主旨で挨拶を述べた。 「当社では、5年間の構想を経て、地域の方々に役立ち、地域社会に貢献できることを目指して『医療クリニックと保育園が併設した複合施設であるメディカル・フォレストたちかわ』を開院・開園した。 事業は始まったばかり、植物も植えたばかりであり、時間をかけて、『一人ひとりを元気にする地域の森』を育てていきたい。皆様に励ましていただきながら事業を伸ばしていきたい。」
 このあと来賓を代表して清水庄平立川市長、小田原潔衆議院議員はじめ各氏からの祝辞が続いた後、前田正明会長、前田聡一郎社長と来賓、各代表によるテープカットが行われた。
 投資規模10億円の同施設が、地域社会におけるリサイクル事業の新しい方向性を示したことは高い評価を受けている。