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再生資源・リサイクル業界の専門紙

日刊資源新報

WEB資源新報BackNumber 2016年8月

ステンレススクラップ 業界存亡の危機へ メーカーの再編も時間の問題に

関東地区のニッケル系ステンレスリサイクル市場は、 旧盆休暇明けの動意期待から一転した工場サイドの荷止めを受けて動意薄商況を変わらず。専業大手日本冶金が中旬から実施した荷止めは、 関係ディーラー業界に少なからぬ波紋を広げている。今回の日本冶金による盆休み明け直後の買い止めの動きは、 「如何に国内ステンレス市況が悪化しているかの証左で、 今後も更に厳しい状況が続くのではないか」 (某リサイクル原料問屋筋) としている。
深刻な外圧の下で発生減等に喘いでいる国内ステンレスリサイクル市場は、 その多くが需給の縮小均衡の下で不採算経営を余儀なくされており、 既に城南方面では老舗の自主廃業が表面化、 業界の今後に対する不安感が急速に広がり始めている。数量・価格面でのプレッシャーが止まるところを知らない外圧の下で、 国内鉄鋼大手や特殊鋼メーカーサイドを含めた需要業界の採算悪化は長期に渡っており、 このままの状況が続けば 「更なる国内ステンレス業界の劇的な再編が行われるのは必至」 と見る向きが多くなっている。「タイミング的には、 業界をリードする大手筋と業界を監督する行政サイドのゴーサイン待ち」 (某専業大手問屋筋) というのが大方の見通しだが、 それでも国内マーケットの混乱が収まるかどうかは微妙なところと、 云わざるを得ない段階に来ている。
「タイミング的には、業界をリードする大手筋と業界を監督する行政サイドのゴーサイン待ち」(某専業大手問屋筋)というのが大方の見通しだが、それでも国内マーケットの混乱が収まるかどうかは微妙なところと、云わざるを得ない段階に来ている。夏場の不需要期入りという季節的要因も加わった国内ステンレスリサイクル原料市場は、沈静化の兆しさえ見えない厳しい外圧の下で、 業界存続の危機にまで追い詰められていると見る向きが多くなっている。例年なら期待される秋需についても、「今年は全く先が見えない状況に追い詰められているのが実情で、リサイクル業界の今後も更なる自主廃業に向けた新たな動きが出てくるのではないか」(前出・同)と、不安感ばかりが広がる展開を見せているようだ。


エンビプロ・ホールディングス 新規事業で成長目指し 木質バイオや障がい者支援など

エンビプロHDの決算説明会

エンビプロHDの決算説明会


株式会社エンビプロ・ホールディングス(本社・静岡県、佐野富和社長)ではこのほど、2016年6月期の決算説明会を開催したが、今後の新規事業として①木質バイオマス燃料事業、②デジタルサイネージ事業、③オフィス系障がい者終了移行支援事業、④カーボンマネジメント・コンサルティング等に取り組む方針を示した。
このうち、①に関しては、FIT制度施行によるバイオマス発電所の建設ラッシュが進む中、バイオマス燃料需要が急拡大することを見込んでの取り組みで、PKSや木質ペレットをマレーシア、インドネシア、ベトナム等から仕入れて国内販売する事業をエコネコルで推進するとした。佐野社長はこのバイオマス燃料事業について「スクラップ貿易で蓄積した運送網、ヤード管理、貿易事務機能を応用でき、既存事業との親和性が高い」とし、今後、国内で750万トンほどの輸入原材料需要が見込まれる木質バイオマス分野を自社グループの成長に繋げる方針だ。
②は国内での導入拡大が期待されるデジタルサイネージを輸入、国内販売やレンタルする事業をE3で推進するというもので、コンテンツ販売から広告収入、リユース、リサイクル等の総合的サービスを展開し、中期的には中古デジタルサイネージや太陽光パネル、蓄電池と組み合わせた災害対応などを提供する。③はオフィス業務への障碍者の就労移行支援事業を行う「Bright」を開始。松本で拠点を開設したほか、今後、首都圏で拠点を設け、ドミナント方式による広域展開を目指すとしている。④はCOP21における温室効果ガス排出量削減が世界的に求められるなかで、大手などで需要の高まる戦略的カーボンマネジメントのコンサルティングを行うことで、顧客接点の拡大を図る。
なお、既存事業については、構造改革を実施しながら、セメント会社や電炉と連携した廃棄物処理事業展開やLIBや炭素繊維、太陽光パネルといった廃棄物処理品目拡充、自治体からの破砕請負等の一般廃棄物事業の取り組み強化のほか、コンテナを活用した海外への小ロット販売、貴金属回収事業、更には高度成長期の建物解体増が見込まれるなかでの動産一括処分事業拡大や、資源回収ボックス・不用品片付けから派生する生活支援事業等のサービス拡充を図るとしている。


環境産業規模は105兆円に 全産業に占める割合は11%超える

環境省の発表によると、2014年の環境産業の市場規模は全体で105兆4133億円と過去最大となった。前年比では1・3%増、同省が推計を開始した2000年と比べると約1・8倍となっている。雇用規模も約1・4倍の256万人となり、過去最大になった。環境産業が全産業の中で占める割合11・1%となり、環境産業が日本の経済成長に与える影響は大きなものとなっている。
市場規模の内訳を分野別に見ると、廃棄物処理・資源有効利用分野が45兆8334億円と引き続き分野別で最大となったものの、前年から1118億円縮小している。一方、地球温暖化対策分野は前年から1兆3382億円拡大しており、地球温暖化対策の進展に伴い、増加傾向が続く。2004年以降、低燃費・排出認定車・ハイブリッド自動車等の成長により、「自動車の低燃費化」分野が増加したことと、2012年以降は、固定価格買取制度等による再生エネルギー利用の急成長に伴い、「クリーンエネルギー」分野での大幅に増加したことが主な要因だ。 そのほか、環境汚染防止分野は前年から4兆3249億円増の13兆6053億円、自然環境保全分野は前年から208億円増の8兆2630億円となった。
輸出額を見ると、前年度から1兆15億円増加し16兆7149億円となった。ここでも2004年以降、地球温暖化対策分野が急速に拡大しており、なかでも低燃費・排出認定車・ハイブリッド自動車が大きな割合を占めている。また、輸入額も3兆2555億円と1299億円増加している。「クリーンエネルギー利用」は、市場の拡大に加えて輸入率も高いことから、これを含む「地球温暖化対策分野」が大きく増加したため。



二輪車リサイクル 2015年度は1679台と低迷 大口事業系ユーザーの排出減で

(公財)自働車リサイクル促進センターでは先ごろ、2015年度における二輪車リサイクル自主取り組みの実績について公表を行った。二輪車リサイクルシステムは、ユーザー等が廃棄を希望する二輪車を適正処理・再資源化するために、国内二輪車メーカー及び輸入事業者による自主取組みとして運営されている。
システムは、高い再資源化率と廃棄物処理法順守の仕組みとして稼動しており、全国に約180箇所の指定引取場所及び14箇所の処理再資源化施設を配置し、指定引取場所での引受け、運搬及び再資源化を実施。また、排出者の利便性の観点から、一般社団法人全国軽自動車協会連合会の協力のもと、廃棄二輪車取扱店による収集及びシステムへの引渡しも可能としているのが特徴だ。
公表結果によると2015年度に同システムが引き取った二輪車台数は1679台となり、前年(6524台)から5000台近い大幅減となった。内訳は、ユーザーからの引取1053台(指定引取場所への直接持込が851台、廃棄二輪車取扱店を経由した持込が202台)、自治体からの引取626台。(別表参照)なかでも、廃棄二輪車取扱店からの大口事業系ユーザーからの引取が減少している。
一方の再資源化に関しては、処理再資源化施設での手選別による液類・バッテリー等を回収後、車体の破砕・選別により金属類の回収を実施。2015年度は熱回収の促進及びタイヤの燃料化を推進し、結果、再資源化率は96・7%(重量ベース)となった。
なお、2015年度の実績は前年度比大幅減となったが、センターなどでは2016年度の取り組みとして、イベント出展、パンフレット配布及びメディアへの情報提供等の他、全国都市清掃会議と協力し、自治体等へ当システムを案内するなどの周知活動を行うとともに、再資源化に際しては、地域の事情によりシュレッダーダストを埋立てせざるを得ない施設については、タイヤの事前選別工程を追加した上、燃料化を実施するなどの方針を示している。


家電リサイクル法 管理票指導最も多く 小売業者への27年度立入検査状況まとめ

経済産業省及び環境省では先ごろ、平成27年度における家電リサイクル法第53条に基づく小売業者への立入検査の実施状況について取りまとめた。それによると、27年度の立入件数は516件と前年度494件から4・5%(22件)の増加となった。両省では、再商品化等に必要な行為の実施状況を把握し、その結果を踏まえて必要な指導等を行うために立入検査を実施している。
それによれば、27年度の立入検査516件のうち、298件の立入検査において、のべ609件の不適正事項について指導等を行ったとしている。うち、最も多かったものが、特定家庭用機器廃棄物管理票の取り扱いに関するもので338件。収集運搬料金の公表に関するものが73件、廃家電の保管についてが37件など。
経済産業省及び環境省においては、今後とも立入検査等を実施すること等により、引き続き、家電リサイクル法の適切な施行に努めていくとしている。


びんリユース推進全国協議会 「リユースびんマーク」部会設置 今年度初の運営委員会

オリジナル招布

オリジナル招布


びん商や学識経験者、NPOなどから構成されるびんリユース推進全国協議会(安井至代表=国連大学名誉副学長・東京大学名誉教授。以下「推進協」)は7月29日、第1回運営委員会を開催し、今年度の活動方針などについて議論した。 議論では、大阪のびん商・成夫屋が同社で独自に行うリユースびんマークや酒販店などに設置する一升びん回収促進招布(まねぎ)の取組を紹介し、推進協としてバックアップできないか検討が行われている。この件に関しては、先ごろ行われた全国びん商連合会の総会で「連合会で行うより推進協で行うほうが大きな取組にできる」とされており、今回議事に挙がった。
リユースマークに関しては、これまで日本ガラスびん協会のRびんマークがあったが、同協会が制作した統一規格びん「Rびん」にのみ付与できるマークであり、既存の一升びんやビールびんなど、そのほかのびんには使用できなかった。今後、推進協内に専門部会を設置し、他団体との共有可能性や国際的なリユースマークの調査、デザイン、マーク付与の認定基準など、具体的な課題について議論を深めていく。一升びん回収促進招布については、酒販店組合との連携を視野に、酒販店との交渉の仕方やローカルキャラクターをデザインに取り入れるなど手法のパッケージ化を専門部会で進めていくことが決まった。
そのほか、今委員会では、事務局から地方自治体におけるリユースびん採用への働きかけについて、地域協議会との連携について、容リ法の動向について報告されたほか、びんリユース将来ビジョン、地域協議会での取組、「リユースびんステークホルダー会議(仮称)」などについて検討が行われた。


古河電工 超軽量アルミ電線納入 市場ニーズは省エネ、省力トレンドへ

古河電工はこのほど、ゼネコン大手の安藤ハザマ向けに「超軽量低圧分岐付きアルミ電線ケーブル」を納入したと発表した。このビル用ハーネスケーブルは、モールド加工による絶縁を施し、省力化を実現した超軽量ハイブリッド製品で、従来までの同社のビル用ハーネスケーブルに比較して約半分の質量に減量、通電容量で比較しても約30%の軽減に成功している。
近年の建設現場での労働力不足や高齢化の流れの中で、現場からは省力化の重要性が一段と高まっており、ケーブル導体に使用される銅の国際価格が急激な相場変動によるコスト面でのリスクも懸念されることから、アルミ導体を用いる同社の「超軽量ハイブリッドビル用ハーネスケーブル(BH)」は、人手不足の現場で求められている「省力化」「簡単」「扱いやすさ」「短時間」「メンテナンス低減」に貢献する「古河らくらく商品」として現場に浸透。
同社では今後、2018年までの売上高を1億円にまで拡大させる計画だ。


産業廃棄物 電子マニフェスト普及率43%に スマホ版の機能拡大で利便性向上

アンドロイド版電子マニフェスト

スマホ向けマニフェスト管理画面


(公財)日本産業廃棄物処理振興センター(以下、「JWセンター」)の最新の発表によると、電子マニフェストの直近1年間(平成27年7月~平成28年6月)の登録件数は2171万9000件となり、普及状況は43%(年間総マニフェスト数を5000万として算出)となった。国ではマニフェストについて「平成28年度まで電子化率50%」の目標を掲げている。一時、伸び率が停滞しこの達成が危ぶまれていたが、直近6月の月間登録件数は195万4000件で前年同月比9・8%と大きく数字を伸ばした。このままの増加率で行けば年度内での達成はなんとか間に合いそうだ。
JWセンターでは昨年からスマートフォン・タブレット版の電子マニフェストの運用を開始。当初、使用可能な機能は「マニフェスト情報登録」など、基本的なものに限定されていたが、今年6月に機能を強化。マニフェスト情報の照会、修正・取消機能を利用できるようにした。これにより通常のWeb版の電子マニフェストでできる全ての機能が、排出や処理の現場においてスマートフォンやタブレットで手軽に行えるようになり、利便性は一層増している。
なお、新機能の操作マニュアルはJWセンターのWebサイトからダウンロード可能。利用推奨環境は以下の通り。
①インターネットへ接続可能なこと

②OS:iOS8x/9・1/9・2/9・3
Android4・4/5・0/5・1 
③ブラウザ:機種搭載ブラウザ(標準ブラウザ)
④画面サイズ:5インチ以上


ガラスびん3R促進協議会 「袋回収」の自治体47% 地方では効率的手法浸透せず

ガラスびん3R促進協議会は今年3月に全国の自治体によるガラスびんのリサイクル状況について調査し、このほど結果をとりまとめ公表した。 ガラスびんにおける収集方法と残渣率については、これまでの調査で大きな因果関係があることが分かっており、資源化量拡大のためには「なるべく割らずに収集すること」、あるいは「色別に収集すること」が重要だ。その観点から、「他資源物との混合ではなくびん単独収集」、「パッカー車ではなく平ボディ車での収集」、「袋ではなくコンテナでの排出・収集」などの手法が理想的とされている。
調査によると、全国で最も多いガラスびんの排出・収集頻度は「月2~3回」で、35・2%(人口比。以下同じ)。次いで34・6%の「週1回」、23・9%の「月1回」と続く。「週1回」が最も多かった地方は関東で62%。大多数の自治体で実施している東京が全体を底上げした。一方、最も少ないのは中・四国の10・2%。また、中・四国は「月一回」の割合が全国で最も多く、48・3%となっている。排出・収集方法について見ると、びん単独での収集を行う自治体は全国で38%となっている。さらに、びんの色別での収集を行っている自治体も22・9%あり、両者を合計すると60・9%と「びん単独収集」が多数派となった。他方、近畿、九州・沖縄では缶やペットボトルなど他資源物との混合回収が過半数を占めるなど、地域によって大きな差があった。また、排出・収集の際に使用する容器はコンテナ・ポリケースでの収集が49・9%とほぼ半数を占める。特に東海・北陸では82・5%と全国平均を大きく押し上げる結果となっている。一方、「自治体指定(含む有料) の袋」、「任意の袋」、「収集専用麻袋」といった「袋回収」を行う自治体は全国で47%となっており、こちらもほぼ半数となっている。
収集・運搬で使用する車両は平ボディトラックが最も多く60・7%、パッカー車が32・5%となった。また、同時に3色を色別に積める改造パッカー車での収集や、通常のパッカー車で各色個別に3回収集を行う自治体も2・8%存在する。多くの地方では平ボディでの収集が一般的だが、九州・沖縄、近畿ではパッカー車での収集が最も多かった。 ガラスびんの収集については、東京や名古屋など大都市で理想的な手法が採られているため、人口比で算出する今回の調査では大きく数字を底支えしていると考えられる。そういったこと差し引けば、地方ではまだまだ効率的な収集が行われていないこともわかる。残渣率の高さなどを考慮すると「混合回収」が必ずしも低コストとは言えないこともあり、今後、全国的に理想的な収集方法が広がっていくことを期待したい。


情報機器R・R協会 リユース販売、過去最高に 携帯・スマートフォン増や輸出拡大で

(一社)情報機器リユース・リサイクル協会(RITEA)では先ごろ、会員35社による平成27年度のリユース情報機器の販売台数が前年度比4%増の437万1000台と過去最高を記録したと発表した。対象としたリユース機器は、パソコンやサーバー、ディスプレイ、複合機、プリンタ、デジタルカメラ、携帯電話やスマートフォン、タブレットに業務用印刷機や業務用ビジネスフォンを加えた21品目。
また、これらの合計販売台数の61・8%を占めるリユースパソコンについては、過去最大となった平成26年度並みの270万台を記録し、国内の新製品パソコン出荷台数990万6000台にリユースパソコンを加えた国内パソコン総出荷・販売台数1260万6000台のうち、リユースパソコンの市場シェアが21・4%と初の2割超えになったとした。ただ、リユースパソコンの比率上昇は、新製品がWindows10環境への移行時期になっていることなどで新製品が前年度比21・4%減なったことから、相対的に比率が上昇した面もある。
RITEAではまず、リユース機器の販売増要因として、従来型携帯電話(11万3000台、前年度比169%増)やスマートフォン(29万4000台、同比69%増)が大きく伸長したことに加え、輸出がけん引したと分析。特に輸出に関して同協会では、26年度よりリユース機器輸出の適正化のため、会員輸出取扱事業者による「DirectReuse?」ロゴ付のリユースパソコン(33万台)や液晶ディスプレイ(12万4000台)、プリンタ機器(2万台)について海外販売を展開しており、アジアやアフリカ、欧米の7地域16か国に対し、3品目合計で前年度比18%増の47万4000台を出荷している。
なお、リユースパソコン市場に関しては、①企業において使用済み情報機器を廃棄するよりも買い取りリユースの方がメリットを受けられるという意識が定着してきた、②中小企業を中心に使用済みパソコンのデータ消去作業を情報機器リユース取扱事業者に一括して依頼することが一般化、③景気回復の基調を背景に企業などでパソコンなどの高性能化を目指した買い替え需要が続き、使用済み機器の「下取り」の受け皿としてリユース市場が機能している、などの点を挙げている。


環境省 広域・一体処理を後押し 「地域循環圏形成の手引き」を公表

環境省はこのほど、循環型の地域づくりを目指す行政、事業者、住民・各種団体などを対象に、「地域循環圏形成の手引き~地域内にある循環資源の利用拡大に向けて~」を公表した。 「地域循環圏」とは、平成20年に閣議決定された「第二次循環型社会形成推進基本計画」で提示された概念で、「地域の特性や循環資源の性質に応じて、最適な規模の循環を形成することが重要であり、地域で循環可能な資源はなるべく地域で循環させ、地域での循環が困難なものについては循環の環を広域化させることにより、重層的な循環型の地域づくりを進めていく」というもの。具体的には、各地域でこれまで行われてきた地域内での様々な循環の取組や仕組みに、広域化、統合管理、一体的処理等の視点を取り入れるのが狙い。
これまで廃棄物処理は自区内処理の原則のもと進められてきたが、近年、地方公共団体の財政のひっ迫や人口減少の問題を背景に前面化してきた考え方だ。 他方、これを推し進めることで地域内の循環資源の奪い合いやこれまでに構築されていた循環の仕組みが崩壊するといった問題が生じる可能性もある。この問題に関して手引書では「循環資源や地域の特性に応じて地域の枠や個々の取組を横断的かつ統合的に見るといった新たな視点を盛り込んでいく必要」があるとしている。
手引書には、平成25~27年度にかけて行われた「地域循環圏形成モデル事業」に選定された事業を中心に、全国の先進事例を紹介するとともに、基本構想の策定~進捗状況に応じた事業の見直しまで、具体的に何をどうすればよいのか、事細かにポイントを紹介している。そのほか、有用な既存ツールや各種補助金の紹介、などが取りまとめられている。


畜産環境シンポジウム 牛の胃袋でバイオガス発電 古紙配合で機密文書処理も可能

畜産環境シンポジウム

畜産環境シンポジウム


農林水産省と一般財団法人畜産環境整備機構は19日、「畜産環境シンポジウム・堆肥で増産!~堆肥農家のニーズに即した堆肥づくりとその流通~」を開催した。 家畜排せつ物を肥料還元するには広大な農地が必要で北海道以外では難しいと言われているなか、近年では畜産農家の大規模化が進み、家畜排せつ物の処理や再生利用に対する需要は高まり続けている一方で、そのインフラの整備は進んでいないのが現状だ。シンポジウムでは基調講演として、東北大学農学研究科の中井裕教授が「畜産環境の課題と将来~新たな価値を生み出す資源循環型畜産~」と題し、自身の研究成果を発表している。
中村氏が研究するのは、ウシの第一胃袋(ルーメン)内の微生物を活用したメタン発酵システム。平均的な成牛のルーメンの内容積は200Lと言われ、一般的な家庭の浴槽とほぼ同じ。そのなかに、2千兆個の細菌と2000億個の原虫が生息しており、これまでの実験で、この微生物がメタン発酵の効率を大幅に上昇させることがわかってきた。この効果を利用し、現在、食肉処理場で汚水として処理されているルーメン液を活用して、家畜排せつ物を間伐材や雑草、古紙などと共にメタン発酵させ、発電した電力で売電収入を得るというのが同氏の研究だ。
同氏の算出によると、年間、牛屠畜6000頭の食肉処理場でルーメン液を抜き取った場合、排水処理コストは830万円削減可能で、食肉業者側のメリットも十分。また、投入する古紙で機密文書処理を行った場合、古紙比率7%で計算すると、メタン発生量1万5000m3、発電量は6万1000kWhとなり、売電で240万円、機密処理費で740万円の収入になるという。現在、宮崎県大崎市でこのシステムを活用したバイオガスプラントを運用し、実証実験を行っており、今後、この施設の実証期間経過後の事業継承に向けた、経済性の確保、継承者の育成といった課題解決に向けた検討を進めていく。